ライフ

睡眠剤・抗うつ剤の多剤併用リスク 少しずつ薬を減らす方法を医師解説

睡眠剤・抗うつ剤の服用に関する注意点を医師たちが解説(写真は片田珠美医師)

睡眠剤・抗うつ剤の服用に関する注意点を医師たちが解説(写真は片田珠美医師)

 不安を和らげるために飲む薬が、新たな不安を生むことも――。よく「歳をとると早起きになる」と言われるが、これは感覚的な話にとどまらない。年齢を重ねると血圧、体温、ホルモン分泌などの睡眠を支える生体機能リズムが若い頃に比べて“前倒し”になるため、健康な高齢者でも早期覚醒や中途覚醒しやすい。そこに心身の不調が重なれば、「不眠症」につながりやすくなる。精神科医の片田珠美医師(フェルマータ・メンタルクリニック)のもとを訪れた60代男性は、役職定年となった50代後半頃から不眠に悩まされていた。

「男性は2種類の睡眠薬を5年ほど飲み続けていましたが、『夜中にトイレに起きた時にフラつく。転倒が怖いから薬をやめたい』と来院されました」

 男性が服用していたのはベンゾジアゼピン系の薬と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬それぞれ1種類ずつだった。

「フラつきは、睡眠薬の副作用である筋弛緩作用の影響が疑われましたが、急にやめると反動で『反跳性不眠』のリスクがある。そこでベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用間隔を1~3日開ける『隔日法』で徐々に減らしました」(片田医師)

 睡眠・呼吸器外来専門のRESM新横浜院長の白濱龍太郎医師も、睡眠薬の長期服用のリスクについて注意を促す。

「ベンゾジアゼピン系は長く飲み続けると耐性ができたり依存症状が出たりします。当院を受診された60代男性には、あえてオレキシン受容体拮抗薬(覚醒を維持する脳内物質の働きを阻害する薬)を追加した。睡眠の質を改善した後にオレキシン受容体拮抗薬1種に絞り、最終的には睡眠薬ゼロを達成しました」

 銀座レンガ通りクリニック院長の臼井幸治医師は、「ひどい落ち込みなどに悩まされるうつ病患者は抗精神病薬などの多剤併用になりやすい。日常で生じている無理が解消できるように指導を繰り返すことで、薬を減らしていきます」と語る。

 くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋医師が事例を明かす。

「パワハラが原因でうつになった男性患者は『前の先生は具合が悪いと伝えると薬が増えるだけだった』と当院を受診されました。うつによる過食で体重が増え、その結果、糖尿病や高血圧の薬まで処方され、結果13種もの薬を服用していました」

 工藤医師は3か月かけて「薬を増やすのではなく、減らすのが治療」と患者に伝えた。

「ただし抗うつ薬は急にやめるとうつ症状のリバウンドが強いため、様子を見ながら10日ごとに1種類ずつ減らしていき、最終的には1日に飲む抗うつ薬を8錠減らすことができました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン