「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」
これまで筆者は、数多くの在宅医療の現場を取材してきた。その大半は末期がんの患者で、亡くなる前日の患者のお宅を取材したこともある。それぞれの患者が、間近に迫っている“死”と向き合っているのだが、家によって雰囲気が全く違う。その理由は「笑い」の存在だと後になって気づいた。明るい雰囲気の家には必ずと言っていいほど、笑い=笑顔があるのだ。
「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せなのだ」
これは、アメリカの哲学者・ウィリアム・ジェームズの有名な格言だが、深刻な状況で笑うことは実際難しい。そこで、宮本医師は、「笑いヨガ」というユニークな取り組みをしている。
「在宅療養は決して楽しいことばかりではありません。がん患者が不安を募らせてしまった時、家族がケアで疲弊してしまった時、“笑いヨガ”を提案しています。インドの医師が考案したもので、ヨガの呼吸法と、笑いの健康体操を組み合わせたものです。集団で体操として割り切って作り笑いで無理にでも笑ってみると、笑いが人から人に広がって、自然な笑いが止まらなくなるのです」(宮本医師)
中高年の男性にとっては、気恥ずかしい気もするが、知人の妻が偶然に「笑いヨガ」にハマっていると聞いた。それを知り、私も試しにやってみたいと思った。
宮本医師は毎月4回、「笑いヨガ」の集会を開いて盛況だったそうだが、残念なことに新型コロナの感染拡大を受けて、現在は休止中だという。YouTubeには、様々な「笑いヨガ」の動画があるので、ぜひ参考にしてもらいたい。また宮本医師が今年6月に上梓した『在宅医療と笑い』(幻冬舎刊)にも、笑いヨガのやり方が掲載されている。
人は誰でも必ず終わりを迎える。その時、在宅医療という選択肢があること、そして笑いヨガという隠し技もあることを思い出していただきたい。