新型コロナウイルスに感染して自宅で療養する人が増えている。それらに対応するため、様々な自治体で血液中の酸素飽和度を測る「パルスオキシメーター」を追加で拡充する動きが広がっている。医療ジャーナリストの市川純子さんが、コロナで身近になったパルスオキシメーターについて、みずからの闘病経験も交えて、その利便性と注意点をレポートする。
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血液中の酸素の大半は赤血球の中にあるヘモグロビンによって運ばれる。これを、指先など体に光を透過させることで、動脈血の酸素飽和度(SpO2)を計測できる測定器がパルスオキシメーターだ。一般的には96から98が標準値。90以下の数字が出た場合は肺のダメージが相当進んでいると判断される。肺のダメージが増えると肺から血液に酸素がこないために酸素飽和度が下がってくる。全身のどこかに炎症があると体温が上がる。体温計が全身の炎症のバロメーターならば、パルスオキシメーターは肺の炎症のバロメーターだ。正しい使用法を指導や助言をもらえれば自分でも計測して目安にすることができるため、新型コロナウイルスに感染した自宅療養者や、もしものときに備えて購入する人が増えている。
池袋大谷クリニックの大谷義夫院長に尋ねると 「新型コロナウイルス感染症の場合、正常な酸素飽和度を下回っていても、普通に会話ができ、苦しくなったり胸が痛くなったりせず、酸素飽和度を計測しなければ容態が悪化していると分からないことがあります。最近は病床がひっ迫しているからと、自覚症状だけでは救急搬送の対象になりづらく、客観的な指標である酸素飽和度の数字が重要。更に、自覚症状だけでは見逃されてしまう可能性のある重症化をキャッチするためにパルスオキシメーターが自治体から貸与されている。これを普段から常備することは意義のあることだと思います」という。
私自身、この体内パルスオキシメーターをカバンに入れて10年以上持ち歩いている。以前なら大げさなと言われることも珍しくなかったが、一度も肺炎を患ったことがない人にとって、酸素飽和度がどんなに大切かわからないと思うので仕方がない。だが、コロナに備える生活が続くなか、以前ほど、持っていることが驚かれなくなったように思う。
長年、パルスオキシメーターを使い続けるなかで気づいたこと、そのときどきに医師などからアドバイスを受けて分かってきた、きちんと測るコツがいくつかある。部屋が冷えすぎている場合はデータが変わってしまうこともあるので、しっかりと指先を温めてから計測するように心がけている。というのも、指先が冷えていると、病態が悪化し血圧が下がってしまったときと同じように、指先の血流が少なくなり酸素飽和度が正常な範囲に届かないことがあるからだ。また、指を差し込むときにはしっかり奥まで差しこむことも重要だ。
よく言われているように、ジェルネイルやエナメルを爪に塗っていると正しい測定ができないので、測る場合はネイルを落としてから。手先のオシャレを止めたくない人にとっては、足の指で計測することもできるのだが、その場合、できれば毎回同じ足の指で測るのが望ましい。そして何より、同じパルスオキシメーターを購入するならば、できれば医療機器認証を受けた、精度が確認されているものが望ましい。私が初めて購入したときは数万円するのが当たり前だったが、最近は、医療機器認証を受けたものでも5000円台から選べる。