汎用性の高い鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)は最も身近な薬と言えるかもしれない。一度、服用を始めると「痛み」が生じるたびに手に取ってしまいがちだが、頻繁な服用にはリスクも懸念される。リストにあるような鎮痛剤は様々な身体の痛みに処方されているが、どこが痛むかで断薬への考え方やステップが異なる。
なかでも使用頻度が高くなりがちなのが頭痛だ。25年以上「薬に頼らない頭痛診療」を続ける秋葉原駅クリニック院長の大和田潔医師が指摘する。
「来院患者の多くが市販の鎮痛剤を服用していますが、対症療法にすぎません。むしろ鎮痛剤を飲み続けると薬が切れることでより強い痛みが生じる『薬物誘発性頭痛』が発生する。薬の量が増えたり、さらに強い薬を服用するケースがあります」
“脱・鎮痛剤”を行ないながら頭痛を抑えるには、「脳を休ませること」がポイントとなる。
「慢性頭痛の背後には、睡眠リズムの乱れと脳の酷使があります。なるべく1日7時間ほどの睡眠時間を確保して、脳を休ませることが鎮痛剤の減薬や断薬につながります」(大和田医師)
鎮痛剤は「身体の痛み」にも処方される。厚労省によると、日本人が症状を自覚する病気やケガのランキングでは、男性の第1位・女性の第2位が腰痛である。
腰痛に詳しい横浜市立大学附属市民総合医療センターの北原雅樹医師は、日本の腰痛治療の在り方に異を唱える。
「日本は世界から後れを取っています。症例の多い脊柱管狭窄症や腰椎すべり症などで不要な手術や古い治療をすることにより、施術後に鎮痛剤が増えるケースが多い。これではもともと多剤処方を受けている高齢者などは、副作用のリスクが増してしまいます。
加齢とともにちょっとした身体の痛みが出るのは当たり前のこと。特に腰の痛みは原因不明のものや治療法が確立していないもの、自然治癒するものがあり、症状を悪化させる恐れのある治療や服薬は避けるべきです」
慢性的な腰痛治療では、鎮痛剤はあくまで「補助的な治療」とされる。
「治療のメインは日常動作や生活習慣の改善で、瞑想やリラクゼーションなどの心理療法や理学療法、運動療法でも痛みを和らげることができます。これらの処置で痛みが取れなかったら、慢性痛ではなく他の病気を疑うべきです」(北原医師)