《変異ウイルスで「子供も重症化」学校があぶない》。5月中旬、『女性セブン』はそう題したレポートを掲載した。当時、日本で猛威を振るっていた新型コロナウイルスは、「英国株(現在はアルファ株と呼ばれる)」。国立感染症研究所によると、首都圏の新規感染者の約90%、大阪のほぼ100%が英国株だった。
子供は感染しにくい、感染しても重症化しないとされた「従来株」に比べ、「アルファ株」では入院せざるを得ない子供の患者が3~4倍になったという医師の見解を報じた。それでも、重症化する数はたしかに少なかった。
記事中では、いまに国内でも「インド株(現在はデルタ株と呼ばれる)」が広まるだろう。そのときには、いまよりもさらに子供の感染が拡大する──そう警鐘を鳴らした。当時、日本ではまったく感染例はなかったが、インドを席巻し、欧米の一部で広まりかけていたデルタ株の感染状況の分析を踏まえたものだった。
だがそのころ、国内では「夏休みに入れば、子供へのまん延は止まるだろう。そのうちワクチンでコロナは収束する」という楽観論が大半だった。
それから、たった3か月──科学者と政治家は、「変異」の恐ろしさを完全に見誤っていた。8月下旬現在、デルタ株は完全にアルファ株を駆逐し、都内の新規感染者の9割以上を占めるようになった。そして、日本の感染者数は過去最大ペースで推移し、その中には子供も多く含まれるようになった。医療体制もパンクしかけている。
振り返れば、パンデミック初期には、ウイルスの突然変異は大きな問題にならないとされていた。だが昨秋、感染力の強いアルファ株が出現して、世界で感染者が急増。次のベータ株は若年層を重症化させ、その次のガンマ株は回復者にも感染した。それでも「ワクチンさえ打ったら……」という見通しが一般的だった。「そのうちに集団免疫ができるはず」という甘い期待もあった。
そんな人類を出し抜いたのが、恐ろしいスピードで感染するデルタ株だった。デルタ株が子供や若者を重症化させやすいのかどうかははっきりしない。ただ、統計上は明らかに若年層の重症者は増えている。それまでの変異株が高齢者を“狙い撃ち”にした一方、デルタ株は子供たちにまん延しやすいタイプである恐れがある。実際、そうした例は過去にもあり、1910年代末に流行したスペイン風邪で重症化したのは、若者が多かった。
年齢が低いほどウイルスをバラ撒く
夏休みの延長や臨時休校で、新学期のスタートを遅らせる学校が出始めている。東京都調布市の市立小・中学校は9月5日まで、多摩市は8月31日まで夏休みを延長し、日野市は29日まで休校する。神奈川県でも横浜市、川崎市、相模原市、大和市の4市が、市立学校を8月31日まで臨時休校か夏休みを延長することを決めた。オンラインでの授業を検討する自治体も少なくはなく、リスク回避の動きが広がっている。