F1の後半戦が始まる。夏休み期間に発表されたF1日本グランプリ中止のニュースは、多くのF1ラバーズを悲しませた。2年連続の中止に加え、今年はホンダのラストイヤー。今年こそ鈴鹿で、の思いがファンには強かった。コロナ禍の現状においては決定を受け入れるしかないが、チャンピオンシップが混戦を極める今年、後半戦への期待は例年になく高まっている。そこで、現在DAZN(ダゾーン)でF1実況を務めるサッシャ氏に、後半戦の見どころ、そして、F1実況という仕事について聞いた。
生まれ育ったドイツから10歳で日本に移住、1985年のドイツGP(ニュルブルクリンク)を現地観戦するなど、大のモータースポーツファンというサッシャさんは、どのようにF1を仕事にしたのか。3か国語を操り、ラジオDJ、自転車競技の実況ほか、多彩に活躍する“異色”のF1実況者が見つめる現在の、そしてこれからのF1の景色とは。
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どのようにF1実況の仕事に辿りついたのか
──サッシャさんがF1実況を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
サッシャ:ドイツに住んでいたときから親の影響でファンになり、日本に来てからも、いちファンとして鈴鹿や富士スピードウエイに観戦に行っていました。仕事としては、まず、J-WAVEの縁で、Jスポーツでツール・ド・フランスの実況をさせてもらうようになったんです。その後、Jスポーツがル・マンの放送を始めるときに、レースがわかって英語ができる人を探していたようで、ル・マンを含むWEC(FIA世界耐久選手権)の実況の仕事をいただきました。
そこから、スーパーGTやスーパーフォーミュラの仕事へとつながっていって、DAZNがF1の放送を始めるにあたって、お声がけいただたという経緯です。F1に関わりたいという気持ちはずっとあったので、嬉しかったですね。
──ファンから、実況者になって、難しさはありましたか?
サッシャ:僕は車は好きなんですが、フォーミュラレースに比べると、WECやスーパーGTといった他のシリーズをそれほど見てきたわけではないので、そちらのほうは勉強が必要だったり試行錯誤が多かったんです。対してF1は、見逃したレースのほうが少ないというくらい見てきたし、日本も海外も含めて、ニュースをチェックするなど常に情報を得ていました。加えて、家に友達を呼んで、実況や解説の真似事みたいなことをずっとしていたんですよ。詳しい人同士だとタイミングモニターを見ながらマニアックな話をしたり、あまり詳しくない人には、わかりやすく説明してファンになってもらったりとか。そうした蓄積があったので、自分としてはスムーズに実況の仕事に入れたと思っています。
──F1でもF1以外のスポーツでも、影響を受けたり憧れたりした実況者はいますか?
サッシャ:F1で言えば世代的に古館(伊知郎)さんの実況は熱心に聴いていましたが、僕は元局アナでもないので、アナウンサーの訓練や技術のある人を参考にしても、絶対に勝てないというのは最初から思っていました。正統派ではない、亜流だからこそ、誰かの真似ではなく、自分が思うようにやらないと他人と差がつかないだろうと。そう考えて、自分がいいなと思った実況や伝え方を、海外の人のものも含めて、ミックスしていったのが今のスタイルですね。