コロナ無策で感染爆発を止められない菅義偉・首相は、お膝元の横浜市長選で有権者から「NO」を突きつけられた。自民党では「もうこの政権は持たない」と見限った政治家が次々に総裁選出馬に名乗りを上げているが、そのなかにあって、世論調査でポスト菅の「期待度1位」のあの人物が沈黙を守っている。なぜなのか──。
「菅首相のままでは確実に総選挙に負ける」(自民党3回生議員)
横浜市長選大敗の衝撃に自民党内はいよいよ浮き足立ち、これから始まる9月の総裁選は首相の“首取り合戦”の様相だ。すでに出馬意欲を表明した高市早苗・前総務相、下村博文・政調会長に続いて、岸田文雄・前政調会長も横浜市長選敗北を見て出馬に動き出した。総選挙前に「新しい看板」に掛け替えようという動きだ。
だが、いまのところ出馬に意欲を見せているのは“小物”ばかり。
「次の総理・総裁は現在の感染爆発を食い止め、コロナ禍からの出口を国民に示す強いリーダーシップと発信力が求められる。優柔不断で知られる岸田にそれが期待できるのか。高市、下村では自前の勢力を持っていないから自力で出馬に必要な推薦人20人を集めることが難しい。いずれも自民党の救世主になれる器ではない」(自民党ベテラン議員)
そんな人材不足の自民党で、若手議員から「選挙の顔」になれると期待されているのがワクチン担当の河野太郎・規制改革相だ。ツイッターのフォロワー数は国会議員最多の230万人を超え、新聞・テレビの世論調査でも「次の首相にふさわしい人」の1位につけている。ワクチン接種の混乱で批判を浴びたが、少なくとも、記者会見で毎回官僚の作文を棒読みするだけの菅首相より国民への発信力があることは間違いない。
「今回の総裁選は党員投票が実施される。派閥の数合わせだけでは決まらないから、河野が出馬すれば党員の支持を集めて台風の目になる可能性はある」(同前)
河野氏自身も総裁選出馬を視野に入れている。自民党では総理・総裁を目指す政治家は、総裁選出馬にあたって政策ビジョンを出版し、事実上の「政権公約」として世に問う伝統がある。河野氏は安全保障からエネルギー政策、社会保障まで自分が目指す政策をまとめた著書『日本を前に進める』(PHP新書)を8月27日に出版予定だ。総裁選を目前にした出版のタイミングは、出馬をにらんで準備を進めてきたことを物語る。