2名が亡くなり9名が重軽傷を負った池袋暴走死傷事故。妻・真菜さん(当時31才)と長女・莉子ちゃん(当時3才)を亡くした松永拓也さんは、無罪を主張する飯塚幸三被告との裁判を行いながら(9月2日に刑事裁判の判決公判)、「ふたりの命を無駄にしないためにも、二度と交通事故が起きない社会を作りたい」と交通事故撲滅活動を続けている。
そして、尊い命を守っていくことへの意義を感じ、「一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」の副代表理事に就任する決断をした。
事故の後、「生きていても意味がないんじゃないか」と命を絶ってしまおうとさえ思い詰めていた松永さんに一筋の道を示してくれたのが、「関東交通犯罪遺族の会」代表理事・小沢樹里さんからの「一人で悩まないでください」という手紙だった。
多くの人は「交通事故で人が亡くなった」と聞けば、「かわいそうに」と思うだろう。しかし自分事として受け取ることができるだろうか。松永さんも「交通事故は映画やドラマの中の出来事で、自分達とは違う世界、とどこかで思っていたところがあります」と話す。
突然、大切な家族を奪われたり、後遺症の残る怪我を負う被害者になってしまうかもしれないこと。また、安全運転を怠たることで加害者になってしまう可能性もあること。そうした実感を持つのはなかなか難しい。
交通事故によって、あたりまえだった生活が突然大きく変わってしまうことを改めて心に刻む機会となったのが、松永さんら交通犯罪遺族が体験を語る「第1回命の里プロジェクト」だ(8月22日、オンラインで開催)。
これまでも被害者支援や交通事故被害について伝える学生向けのプロジェクトなど行ってきた「関東交通犯罪遺族の会」が、7月に一般社団法人として登録して初のイベントとして特に思いをこめて開催された。
募集を開始してすぐ定員になった参加者110名は若い世代から高齢の方まで幅広く、またボランティアが運営するなど、交通事故をなくすためへの世間の関心の高さが伺えた。
遺族のリアルな言葉には、何より「思い」が詰まっている。その気持ちを伺うことで、交通事故がどんなに悲惨か、起こしてはいけないものかがより強く実感できる。