たくさんの種類がいる“害虫”のなかでも、特に嫌われているのがゴキブリだ。食べ物が豊富な裕福な家に現れることから、かつては“黄金虫”などとも呼ばれていたが、いまは害虫の代名詞だ。なぜゴキブリはこれほどまでに嫌われるのか?
「そもそもゴキブリは、蚊や蜂のように人間を襲ったり、血を吸うことはないので、怖い虫ではありません」
と話すのは、アース製薬研究部生物研究課の有吉立さんだ(「」内以下同)。
とはいえゴキブリは、病原体を媒介するなどして、人や家畜に害を与える「衛生害虫」、見た目の気持ち悪さから不快感を与える「不快害虫」、食品や紙を食べ、電化製品を故障させる「経済害虫」の“害虫三冠王”を獲得している。人の生活に害を及ぼすことは間違いない。
「でも、性格は控えめなんです。夜行性で暗いところが大好き。すみっこが好きで、部屋の真ん中を歩くことはあまりありません。たまに昼間、堂々と登場するケースもありますが、それは、迷子になったなど彼らにとっても不測の事態のとき。滅多にありません。昼間は基本的に、家の中の暖かくて狭いところや、人の気配がない場所でじっとしています。たとえば、冷蔵庫などの家電の裏側や下は暗くて狭くて暖かいので、格好の巣なんです」
しかし、こういった場所に大量発生すると、コンセントやケーブルに影響が出て壊れてしまうというわけだ。
1mmの隙間が侵入経路に
家庭で最もよく見かけるのは「クロゴキブリ」で、卵から成虫になるまで約1年かかる。夏までに成長して9月頃までに卵を産むため、活動時期は6~10月。25~30℃くらいの気温が、ゴキブリにとって快適なのだという。そのため、35℃以上の高温になると、30℃くらいの場所へ移動する。つまり、気温が下がれば遭遇する機会が増えるだけでなく、猛暑日には涼しい場所を求めて家の中に入ってきやすいのだ。
そもそもゴキブリはどこから侵入してくるのだろうか。
「網戸の破れや隙間、換気扇、エアコンのドレーンパイプなどが多いですが、成虫なら7mm~1cm、幼虫だと1~2mmの隙間があれば余裕で侵入できます。また、卵や幼虫であれば、宅配便の荷物に紛れて玄関から堂々と入ってきます。段ボールを処分せず長く放置していると卵が孵って、家の中で増殖してしまいます」
ゴキブリは段ボールも食べるので、育つには格好の場所。引っ越し後に荷物を片付けずにいれば、新築であってもゴキブリが出る可能性は高い。
また、集合住宅の1階が飲食店の場合、そこのゴキブリがやってくるケースもある。エレベーターに乗ったり、壁伝いに上ってくるので、高層マンションだから出ないということもない。