多様性を認める社会の実現のためには、人を外見だけで判断することは避けるべきだ。だからこそ、今の時代の“イケメン”というものは、単純に見た目だけではなく、中身も含めての評価と言えるだろう。
いわば、社会情勢の影響を受けて、時代ごとに変わっていくのが“イケメン”。1970年代後半から1980年代では、むしろ男性たちが見た目を磨いていく時代だったのかもしれない。
1970年代後半に入るとニューミュージックや映画『サタデー・ナイト・フィーバー』に代表されるようなダンスミュージックが流行。ほぼ時を同じくしてデヴィッド・ボウイ(享年69)のようにアイシャドーにチーク、口紅を施したロック歌手が人気になり、“男性メイク”が世界中に浸透し始める。
日本では、1979年にYMOが登場し、シンセサイザーを使ったテクノポップに若者たちは魅了されていく。
「1980年代に入ると、それまでの長髪が急に古臭く感じられるようになります。男性の間では短く切った髪にパーマをかけたり、襟足を刈り上げたり、もみあげ部分を鋭角に切る“テクノカット”がおしゃれとされるようになりました」(イケメン評論家の沖直実さん)
奇抜なメイクとファッションをした男性たちが時代をリードしていくが、日本では青春ドラマ全盛期を迎え、多くのアイドルが登場する。
「1979年から『3年B組金八先生』(TBS系)の放送が始まり、田原俊彦さん(60才)、近藤真彦さん(57才)、野村義男さん(56才)の“たのきんトリオ”に日本中の女の子たちが夢中になりました。ただ、アイドルの枠にハマらない、吉川晃司さん(56才)のような男気あふれたタイプに惹かれる女子もいましたね」(沖さん)
バブル景気によってモテる男性は 稼げる遊びなれたシティーボーイに
1985年、日本の資産価格(株価や地価など)が急上昇。さらに円高により、異常なまでの好景気となる。
「日本全体が好景気だったこともあり、女性が結婚相手に求める条件として、経済力にドンとフォーカスが当たりました。この頃は、企業も接待交際費が潤沢で、タクシーチケットを使って、おしゃれなレストランに女性を連れて行ったり、高級なワインの名前をたくさん知っていたり、といった“いかに遊びなれているか”が、モテる条件の1つになっていました」(世代・トレンド評論家の牛窪恵さん・以下同)