新型コロナワクチンと健康被害の因果関係は、否定できない──国が初めて患者の救済を決めた。
厚生労働省は8月19日に非公開で開いた「第143回 疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会」で、新型コロナのワクチン接種によって副反応が起きた可能性が否定できないとして、男女29人に医療費などを支給することを決定。対象者は月額最大3万7000円の医療手当などが支給される。
国が認めた29人の症状の内訳は、アナフィラキシーやアナフィラキシーに似た症状が23人、急性アレルギー反応が6人となっている。この29人の他にも、12人から健康被害の申請があったが、厚生労働省は保留とした。今回の判断について同省に尋ねると、次のように回答があった。
「保留になった人たちについては、判断材料となるデータが足りなかったケースや、会議の終了予定時間が迫って審査時間が足りなくなり、次回に審査を回したケースがあったということです。審査分科会でどのような審査が行なわれたかの内容につきましては、個人情報保護のため非公開としております」(健康局健康課予防接種室)
今回ワクチンとの因果関係が審査されたのは41件のみだが、アナフィラキシーの疑いがあるとして報告された事例は、7月25日までに2000件以上に及んでいる。アナフィラキシーと判断されるための必須基準は、「突発性の発症」「徴候および症状の急速な進行」「2つ以上の多臓器の症状」の3つがあり、疑いのあった約2000件のうち、368件が該当するとされる。
具体的にはどのような症状を指すのか、昭和大学医学部客員教授の二木芳人氏が解説する。
「アナフィラキシーとはアレルギー反応の一種で、アレルギー物質など特定の原因物質が体内に入ることに対して、皮膚や消化器官などに急性に強い反応が出ることを指します。ワクチンに含まれる何らかの物質が原因で、そうした症状が出る可能性がある。
アナフィラキシー反応は多くの場合、原因物質に触れてから15~30分以内に発症します。稀に、数時間から半日程度してから発症する人もいますが、一般的に接種後の早い時期に発症するほうが重症傾向は強いと考えられます。重症の場合、適切に措置をしなければ、ショック状態になり死亡することもあります」
こういった突発的な副反応が出やすい人には、特徴があるのだろうか。
「一般的にアナフィラキシーを起こしやすい人について、年齢や性別による特徴は見られません。しかし、過去にアレルギーの既往症や特にアナフィラキシーの既往症がある人は、起こしやすいと言われています」(二木氏)