ライフ

患者が治療意図を理解する「アドヒアランス」が多剤処方のトラブル防ぐ

患者が治療や服薬について積極的に理解しようとする姿勢が大切(イメージ)

患者が治療や服薬について積極的に理解しようとする姿勢が大切(イメージ)

 気がついたら毎日何十錠もの薬を飲んだいた──という高齢者も多いのではないだろうか。そして、「薬を減らしたいが、何から手をつけていいか分からない」という悩みを抱える人の参考になるのが、実際に薬を減らせた人の事例だ。

 多剤処方がトラブルを招くひとつの要因は、医師の説明が十分ではなく、患者が「服薬の意図」を理解できていないことだ。

 それにより、様々な問題が生じる。解決のポイントとなるのが「アドヒアランス」という概念だ。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏が解説する。

「治療や服薬を理解した患者が自らそれらに積極的に関わり、医師との合意のうえで治療を受けることを指します。アドヒアランスが悪い患者は自己判断で不規則な服用をして、期待される治療効果が得られないうえ、思わぬ副作用に見舞われる恐れがあります」

 日本病院薬剤師会は2018年2月に『多剤投薬の患者に対する病院薬剤師の対応事例集』を公開。同会は多剤投薬の実態調査の一環として、全国48の病院から対応事例を集積し、内容を精査・厳選したうえで33の事例を詳細に紹介している。この事例集にある〈アドヒアランスの改善〉というテーマに分類された減薬の成功例を紹介する。

 腰の骨が捻れる腰椎変性側弯症を患った80代男性(別表の症例)は、入院時のヒアリングで15種類の多剤処方が発覚した。内科医の谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎)が解説する。

「胃腸薬や降圧剤から整腸剤まであり、様々な病院や診療科にかかって薬が増えたのでしょう。本来は〝やめ時〟があったのに、本人が服薬の意図を理解せず飲み続けた典型的なケースと考えられます」

 精査すると、処方意図が不明かつ不要な薬が9種類あり、患者も「薬を用法通り飲めず、薬効が不明なので減薬したい」と申し出たため、減薬指導を開始した。

 花粉症などのアレルギー対策になる抗ヒスタミン薬はふらつきリスクがあるため断薬し、咳やしびれなどの症状がみられないことから、咳止め薬や漢方、ビタミン剤や胃腸薬も処方を中止した。

 一方で、胃腸薬のファモチジンは一旦中止したが、本人が胃部の不快感を訴えたので再開。整腸剤のビオフェルミン配合散は中止後に便秘症状が出たが、その都度便秘薬を処方することで対応した。

「柔軟な対応により、本人の薬剤知識が向上して『症状が出たら薬を飲めばいい』と学べます。『とにかくやめる』ではなく、自分にはどの薬が必要か理解することが大事です。それがさらなる減薬につながります」(谷本医師)

関連キーワード

関連記事

トピックス

男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”川崎春花がついに「5週連続欠場」ツアーの広報担当「ブライトナー業務」の去就にも注目集まる「就任インタビュー撮影には不参加」
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末は再婚へと向かうのか
「これからもずっと応援していく」逮捕された広末涼子の叔父が明かす本当の素顔、近隣住人が目撃したシンママ子育て奮闘姿
長浜簡易裁判所。書記官はなぜ遺体を遺棄したのか
【冷凍女性死体遺棄】「怖い雰囲気で近寄りがたくて…」容疑者3人の“薄気味悪い共通点”と“生活感が残った民家”「奥さんはずっと見ていない気がする」【滋賀・大津市】
NEWSポストセブン
坂本勇人(左)を阿部慎之助監督は今後どう起用していくのか
《年俸5億円の代打要員・守備固めはいらない…》巨人・坂本勇人「不調の原因」はどこにあるのか 阿部監督に迫られる「坂本を使わない」の決断
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン