女優として多くの仕事を抱えていた芦名星さん(享年36)は昨年9月14日、突然、自ら命を絶った。遺書もなくその死は多くの謎を残した。あれから1年──あのとき、彼女の身に何が起きていたのか。母が初めて「娘の死」について語った。
「家族に会えなくなって、こっちに帰ってこられなくなって、少しずつおかしくなっていったんじゃないかな」(以下、「」内は芦名さんの母)
芦名さんにとって、家族は特別な存在だった。芦名さんは芸能界を夢見て、中学卒業と同時に福島県から上京した。高校卒業後の2002年にモデルとしてファッション誌に登場し、さらに同年女優としてもデビュー。2006年に日本やカナダなど5か国合作の映画『シルク』のヒロインに抜擢されると、『相棒』や『テセウスの船』(TBS系)など、数々の人気ドラマに出演。主演から脇役まで、幅広くこなせるバイプレーヤーとして、今後が期待される女優の1人だった。
夢を追い、東京でひとり奮闘する芦名さんの支えになっていたのが家族だった。どれだけ忙しくとも頻繁に帰省し、2011年に発生した東日本大震災以降は東北の復興支援にも力を入れていた。
しかし新型コロナの影響で、県をまたぐ移動に自粛が求められてしまう。ドラマで共演し、頻繁に連絡を取り合う仲だったという三浦春馬さん(享年30)が亡くなった2日後の2020年7月20日、芦名さんは、インスタグラムに《#恋しい》《#家族が大好きな私》《#会いたい》などと書き込んでいた。
「コロナが広がってから、帰ってこなくなったんです。私たちのことを気遣っていたっていうか、私たちに感染させたらいけないからこなかったんだと思います。帰ってきたくても、帰ってはいけないという気持ちが強かったんだと思うんです。
ただね、ちょうど去年の今頃、主人が体調を崩してしまって、心配だからって帰ってきてくれたんです。それが最後になってしまった……本当は、もっと帰ってきたかったんだろうな……」
弟のように接していた親友の死、そしてコロナで生じた家族との距離。芦名さんの中でどうしようもない不安や孤独が募る一方、それを癒してくれる人がいなかった。