放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、笑福亭鶴瓶のドキュメンタリー映画を観て感じた「芸」の根本についてお届けする。
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こんな御時世ですが我々娯楽屋(エンタメ屋)にとって劇場、映画館、寄席へ出向くというのは血がさわぐ。
昨日は渋谷パルコ劇場。宮藤官九郎脚本・演出のマジロックオペラ『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』へ行って屁を浴びてきた。『あまちゃん』以来のタッグを組む主演ののんちゃんもギターを弾きならし歌いまくるので久々のじぇじぇじぇだった。この芝居、渋谷パルコが終わったら大阪、仙台へも行く予定だとか。もし行ったらよろしくネ。
客席で清水ミチコとバッタリ。
「なんか生で舞台見るのって久しぶりだよね。やっぱいいわ」
「俺、昨日は有楽町で鶴瓶のドキュメンタリー映画見て来たよ。『バケモン』っていって17年間落語会を中心に非日常の鶴瓶を追いかけた力作。コロナで苦しむ全国の映画館を支援してんのよ。映画を日本中の映画館にそっくり寄付して売り上げの全額が映画館のものになるらしいよ。その前の日はガースー(菅総理。72歳。私と同学年。念の為)のドキュメンタリー。政治バラエティ映画と銘打たれた『パンケーキを毒見する』っていうんだ」
「有楽町だ渋谷だって毎日出掛けてんのあんた!? お前はギャルか」と嬉しくもするどいつっこみ。
「2本打ってるからって調子に乗るなよ」
「ハイ」
おとなしく頭を下げる。なんせ30年近く一緒にラジオで喋ってる相方でもあるから何も言えない。うちのカミさんよりもきびしい。
帰りに本屋をのぞくとエンタメ本のラッシュ。昭和のレジェンドから令和までの司会者(仕切り屋)を分析した古舘伊知郎の『MC論』(ワニブックス)。この本によると鶴瓶は“「実家感」を醸し出すビリケンMCは日本一の雑談王”と書いている。映画を見てても全国どこの楽屋でもいろんな人が「ツルベちゃん」と寄ってくる。「芸」は人に愛されなくては駄目なんだなと思う。