誰もが夢見る“馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏も、馬券生活を夢見て日々、競馬の研究に勤しんでいる。そんな須藤氏が、万馬券ゲットのために夏競馬の格言「夏は格より調子」を検証する。
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夏の格言のうちで知られたもののひとつ。以前に検証した「夏は牝馬を狙え」と同様、実績下位の馬に逆転の目がある。その点で魅力的である。
夏は予定調和を壊す。暑くてコンディション維持が難しい。地方の競馬場はコース的に紛れが起こりやすい。格下だからノーマークで思い切った競馬ができる。理由はいくつかありそうだ。
いきなり話は飛ぶが、かつて私が相撲記者だったときに聞いた話。ある平幕力士は7月の名古屋場所と9月の秋場所に三役力士によく勝った。力士は暑さにとても弱いから、この時季は節制できるかどうかで勝負が決まると。ひょっとするとこの競馬格言を土俵に流用したのかも知れぬ(原則、力士は競馬禁止ですけど)。
「格」とは、ありていに言えば実績。馬柱を凝視せずとも斤量を見ればわかる。重鎮というくらいで重いのである。先に行われた夏の新潟の風物詩、アイビスサマーダッシュでも、馬名からして風格溢れるライオンボス(57キロ)を51キロのオールアットワンスが破った。オールは1番人気(1人)だったけど、この格言どおりだなと思ったものである。
実績十分の格上馬を軽やかに打ち負かす。そのへんの逆転具合は実際どうなのか。例によって「JRA-VAN TARGET」を使ってデータを取ってみた。2016年までさかのぼって、オープン以上の8月のハンデ戦(29レース)、別定戦(34レース)である。勝った馬の斤量と、1番人気馬の斤量と着順を見た。
1人を背負って勝ち切ったのは19回。うち51キロが1回、53キロの軽量が2回。あとは54~57キロ。格を見込まれたもののしっかりと勝っているケースも多い。
勝った馬の平均斤量はハンデ戦で55.95キロ。別定戦で55.32キロ。データを取ると、まあこうなるのだった。人気薄で斤量54キロ以下の逆転はハンデ戦で15回あった。高率である。