国内

池袋暴走死傷事故 求刑7年なのに判決が5年の減刑はなぜ

東京地裁へ入る松永拓也さん

判決の日、犠牲となってしまった妻・真菜さんと長女・莉子ちゃんの写真と東京地裁へ入る遺族の松永拓也さん。真菜さんの父親・上原義教さん(右から2人目)。遺族側の代理人弁護士・高橋正人さん(左)、同じく代理人弁護士・上谷さくらさん(右)、「一般社団法人関東交通犯罪遺族の会」代表理事・小沢樹里さん(右から3人目)。(撮影/浅野剛)

 2019年の池袋暴走死傷事故。飯塚幸三被告(90)に下された判決は禁錮5年の実刑判決だった。

「被告人、いいですか」

 判決を読み終えた裁判長は、車椅子に座る飯塚幸三被告(90)に向けてこう発した。

「過失は明白。判決に納得できるなら被害者遺族に真摯に謝っていただきたい」

 事故で命を奪われた妻の松永真菜さん(当時31才)と長女・莉子さん(当時3才)の遺族・松永拓也さんは、判決が出た瞬間に涙が出たと振り返る。

「これで命が戻ってくるならどんなにいいかと思ったら、空しくなってしまいました。この判決は、私たち遺族がこの先少しでも前を向いて生きていけるきっかけにはなれるなと思います」(松永さん)

 今回の判決について、遺族側の代理人弁護士・高橋正人さんはこう話す。 

「裁判官があのような発言をすることは非常に珍しい。 理不尽な動機で人をわざと殺す事件の場合には、あのようなことを裁判官は言いません。遺族感情をかえって逆撫でするからです。故意の殺人罪では謝ったからといって、許せるものではないのです。しかし、今回のような過失犯では別です。裁判で、飯塚被告の主張を『あなたは間違っています、 もし納得するならきちんと謝罪するように』というのは大変遺族に寄り添った言葉だったと思います。

 同じ交通事故の被害者遺族から『私達も気持ちが救われた』との声がたくさん私のところに寄せられています。もし飯塚さんが判決に納得するなら、今が謝罪のラストチャンスではないでしょうか。私は横で見ていましたが、裁判官が『納得するのなら謝罪しなさい』と 言った時にはうなずいていました。私は飯塚さんの良心に期待したいと思います。」

 同じく、遺族側の代理人弁護士・上谷さくらさんも、

「どちらの味方でもない中立的な立場の裁判官が『納得したのなら、被害者にちゃんと謝って欲しい』と言葉をかけたのは、裁判官が飯塚被告に謝るチャンスをくれたと思っています」

 と言う。

「事実認定の仕方自体はオーソドックスで、淡々としたもので、手堅い感じがしました。被害者に対する温かい眼差しを感じました。判決を聞いてそう感じることはあまりないのですが、いろんなことを考えて言葉を選んで言葉をかけてくれたのかなと思える、不思議な温かみを感じる判決でした。

 さまざまな事件で判決を聞いてきましたが、裁判官として客観的な事実認定をした上で、被害者に寄り添ってくれたのかなと思いました」(上谷さん)

関連記事

トピックス

異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンを食べようとしたらウジ虫が…》「来来亭」の異物混入騒動、専門家は“ニクバエ”と推察「チャーシューなどの動物性食材に惹かれやすい」
NEWSポストセブン
「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 長嶋一茂のヤクルト入りにカネやんが切り込む「なんで巨人は指名しなかったのよ。王、理由をいえ!」
週刊ポスト
タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン