今夏は全国的に猛暑日が続いた。そして暦の上では秋になったいまも、一歩外に出るだけで滝のような汗が流れてくる。その汗を流すシャワーの温度は、ぜひ「ぬるめ」にしてほしい。ほんの1℃の違いでも、あなたの美しさを大きく左右するというのだ。湯は、水より出でて水にあらず。
屋外ではジリジリと紫外線に焼かれて大量の汗をかき、涼しい室内ではガンガンに効いた冷房に水分を奪われていく。日本の夏は、いつ、どこにいても、肌にとっては悪いことだらけだ。
にもかかわらず、「冬ほど乾燥しないから」「マスクをしているから」「暑くてだるいから」と、肌や髪の手入れがおろそかになってはいないだろうか。
パナソニックが20~40代の女性を対象に行ったアンケート調査によると、冬は80%の回答者が保湿ケアを入念に行っているのに対し、夏は40%の人しか保湿をしていないことがわかった。およそ2倍もの人が、夏のケアをサボっているのだ。
一年で最も重要で、最もおっくうな夏のスキンケアやヘアケアをどう乗り切ればいいのか──答えは、「洗うお湯の温度を下げること」にあるという。
顔の皮膚は体の中でいちばん薄い
顔の皮膚は、頭皮や体とは比べものにならないほど薄く、ちょっとしたことでダメージを受けやすい。日本化粧品検定協会代表理事の小西さやかさんが言う。
「肌は、ごく薄い層が何重にも重なってできており、そのいちばん外側の角層(角質層)が、紫外線やほこりなどの有害な物質から内側の真皮を守りながら、水分を肌内部にとどめる役割を果たしています。
論文によると、手のひらの角層が約50層なのに対し、頭皮は約12層、ほおは約10層、ひたいはわずか約9層しかありません」
顔の皮膚は全身の中で粘膜の次に薄く、弱い。そのため、紫外線やエアコンの乾燥はおろか、顔を洗うためのお湯ですら傷ついてしまうのだ。
「洗顔の際は、体温よりも低く、ほおの温度に近い32~34℃の“冷たすぎない水”が適温です。皮脂は30℃前後のお湯で溶けるので、わざわざ熱いお湯で洗う必要はありません。熱いお湯で洗うと、肌の乾燥を招きます。内部にある『皮脂膜』という、人間が生まれながらに持っている天然の保湿成分が必要以上に洗い流されてしまいます」(小西さん)
皮脂が気になるなら、熱いお湯で洗った方がいいのかというと、それは大きな間違いだ。むしろ、皮脂が多い人ほど肌は乾燥しきっている。菜の花皮膚科クリニックの菅原由香子さんが言う。
「皮脂を落としすぎて肌が乾燥すると、角層の機能が低下し、紫外線やほこりなどのダメージを受けやすくなります。それに対し、肌は少しでも乾燥をやわらげようと、それまで以上に大量の皮脂を分泌するのです」
その結果、肌内部には水分が足りていないのに、表面はベタベタと脂っぽい“かくれ乾燥肌”になる。
「皮脂の分泌量が多すぎることも、肌にとってダメージになります。肌表面で皮脂が酸化すると、シミの原因になるほか、毛穴が大きく開いて目立つようになるのです」(菅原さん・以下同)
口元やあごにできやすい大人ニキビも、乾燥が原因であることが多い。
「水分不足で角層がゴワゴワになると、そこに皮脂汚れがたまってニキビになります。また、肌が乾燥していると、本来は一つひとつが水分で満たされてふっくらしているはずのきめがしぼみ、しわになります」
菅原さんによれば、ひたいや鼻などのTゾーンは皮脂腺が多く脂っぽくなりやすい一方で、あごやほおなどのUゾーンは皮脂腺が少なく、乾燥しやすい。
「Tゾーンは34℃、Uゾーンは25℃と、場所によってすすぎの温度を変えられれば理想的です。特に乾燥しやすい人は、Uゾーンに限らず、顔全体を25℃の水で洗ってもいいでしょう」
洗うときは、洗顔料やせっけんをたっぷりと泡立て、手のひらや指が肌に触れないように気をつけたい。ゴシゴシ洗いも熱いお湯と同様に、シミやしわの原因になるからだ。
「顔の中でも、ほおは鼻やあごなどと比べると特に皮膚が薄く、摩擦にも弱いのです。泡をすすぐために、シャワーから出る水を直接顔にかけるのは絶対に避けてください。手ですくった水をそっと肌に当てるようにしてすすぐか、ごく弱い水圧のシャワーをチョロチョロと流すようにしてすすぎましょう」