党役員人事や解散戦略など、政局をめぐる話題ばかりが先行した自民党総裁選は、菅義偉・首相の「不出馬表明」で新たな局面に突入した。9月17日の告示まで党内の綱引きは続きそうだが、政局よりも重要なのは、候補となっている政治家に総理・総裁としての資質とコロナ危機を乗り切る手腕があるかどうかだろう。(文中一部敬称略)
本誌・週刊ポストは半世紀以上にわたってこの国の政治を取材し、歴代首相の失敗と成功を見つめてきたベテランの評論家、ジャーナリスト5人に、総裁選有力5候補の「総理の資質」を10段階で採点してもらい、現職の菅氏と比較してもらった。
評者ごとに採点時に重視したポイントは違う。
非常時だからこそ、総理になるには「決断力」が求められると指摘するのは、元時事通信政治部長の政治ジャーナリスト・泉宏氏だ。
「現時点の各人の決断力は、総裁選出馬をめぐる姿勢から判断した。いち早く出馬の意思を表明し、困難な状況下で政権を担う決断力を示した者には高評価、出馬を迷っている者、それまで総裁選に出馬したがっていたのに今回は非常に慎重な者は低評価をつけた」
田中角栄研究で知られる政治評論家・小林吉弥氏は「政策力」を挙げる。
「総裁選を目指す政治家は政策本を出版することが多い。石破や岸田、河野は出したし、高市も出版するという。だが、本を書いたから政策力があるとは言えない。
政策力とは現在の日本にとって何が大きな課題なのかを把握する力、解決する方法を考える構想力、そして実現力を合わせたもの。田中角栄は生涯に33本の議員立法を成立させ、すべて1人で国会答弁をこなせるくらい勉強していた。そこまでやったから役人を説得できた」
さらに、浦和市議や埼玉県議を歴任した評論家の小沢遼子氏は国民への「共感力」を重視し、元共同通信政治部記者として政治史に残る数々の政争を取材してきた政治ジャーナリスト・野上忠興氏は人や組織を動かす「統率力」を基準に評価。元時事通信解説委員で鈴木善幸内閣以来、政府の行革に携わってきた評論家・屋山太郎氏は、総理の資質で最も大切なのは「大局観」だと見る。
本誌は評者それぞれの採点を五角形のレーダーチャートにまとめた。