かつて毎週日曜日夜7時30分から放送されていたテレビアニメ“世界名作シリーズ”。その代表作といえば、『アルプスの少女ハイジ』だろう。
(※“世界名作シリーズ”をどの作品から数えるのかは諸説あるが、今回はシリーズの流れを決定づけた『アルプスの少女ハイジ』からとする)
女性セブンが読者1464人を対象に「好きな世界名作シリーズの作品」についてアンケートを実施したところ、見事『アルプスの少女ハイジ』が1位だった。主人公・ハイジの声を担当した声優・杉山佳寿子さんが当時を振り返る。
風邪声だからこそ勝ち取れたハイジ役
ハイジ役はオーディションで選ばれたという。
「オーディションは一発勝負なので、体調を万全にして臨みたかったのですが、あいにくその日は風邪をひいてしまい、熱も38℃近くまで出てしまったんです。それでもあきらめられず、不調のまま挑戦しました」(杉山さん・以下同)
当時の杉山さんは26才。舞台俳優としてのキャリアを積みつつ、声優としてもすでに活躍しており、『ウメ星デンカ』(1969年)の主人公デンカや『魔法のマコちゃん』(1970年)の主人公マコを演じるなど、少年から美少女まで演じ分けられる若手注目株だった。
「当時、少女の声は高音できれいな声が好まれたんですが、その日の私には、どんなにがんばっても出せない。少しハスキーで低めの“飾らない声”でチャレンジしました」
しかし、これが功を奏した。
「後から演出家の浦上靖夫さんが、“隣に住んでいる女の子みたいな、身近な声だから受かったんだよ”と……」
まさに怪我の功名だったと杉山さんは朗らかに笑う。
「私はよく役づくりのために、電車の中などにいる子供たちの声音やリズム、話す内容なんかを観察しているんですが、意外と野太かったりして、実はそんなに高音ではないんですよね。あのときは熱があったせいで雑念がなく、飾ることなく子供の役に集中できたんだと思います。それがよかったんですね。“絶対この役を取るぞ!”と、力むと大体うまくいかないから(笑い)」