「ようやく秋めいてきましたが夏の間、娘の小学校では『熱中症計』の数値をこまめにチェックし、一定の数値を超えると休み時間でも運動場に出られませんでした。“熱中症”という言葉すら一般的でなかった私の子供の頃には信じられませんが、3年前に県内の小学生が校外学習後に熱中症で亡くなってから、暑さ対策が厳しくなったようです」(愛知県・38才母親)
「隣の市で少し強い雨が降ったかと思ったら、あっという間に道路冠水や住宅の浸水被害が発生して大惨事になり、住民がゴムボートで救出される映像を見ました。あれ以来、雨が降るたびにわが家に同じことが起きるのでは、と強い恐怖を感じるようになりました」(静岡県・51才主婦)
「せっかく水害とは無縁の都心で憧れのタワーマンションを購入したのに、武蔵小杉のマンションで起きた“逆流浸水”の様子を見ると、大雨が降ったらここでも非常時にトイレが使えなくなるかもしれないとわかって、大きなショックを受けています。いつの間に日本はこんなに水害に悩まされる国になったのでしょうか」(東京都・45才会社員)
猛暑に豪雨、台風、浸水、土砂崩れ……。現在、日本のどこに住んでいたとしてもこれらの被害から逃れることは、ほぼ不可能といっていいだろう。天気をとりまく状況に、一体何が起きているのか。
温帯の日本が、亜熱帯、いや、熱帯に近づいている──ウェザーマップ代表で気象予報士の森朗さんは言う。
「気温の上昇と雨量の増加がまったく同じタイミングで起きているうえ、雨の降り方にも変化が起きている。最近多く見られる短時間の土砂降りは極めて熱帯的な気候だといえるでしょう」(森さん)
防災システム研究所所長の山村武彦さんも「この10年で強い雨が多く降るようになった」と声をそろえる。
「気象庁の地域気象観測システム『アメダス』のデータによれば、計測を開始した1975年からの10年と、ここ10年を比べると、1時間に80mm以上の猛烈な雨が降った回数が1.9倍にも増加しています。
そもそも日本は人口の半数が、河川の河口付近に集中しており、浸水や液状化の恐れがある『沖積低地』に住んでいる。近年の水害の多さは脆弱な土地に多くの人が住むなかで、『記録的な大雨』が増加したことによる結果といえるでしょう」(山村さん)
こうした強く激しい雨の背景にあるのは、地球温暖化だ。アメダスによればここ半世紀で気温35℃以上の猛暑日は3.1倍にも増えている。
この傾向は世界的に見ても明らかで、2020年に米カリフォルニア州デスバレーは気温54.4℃を記録し、北極圏でも過去最高となる気温38℃に達している。当然、自然環境は大きな影響を受け、シベリアの永久凍土が溶け始めるなど、気温上昇の影響は地球規模で急速に広がりつつある。