新型コロナウイルスの変異種については、確認された地域の名前ではなく、24文字あるギリシャ文字をつけて呼ばれている。アルファから始まって今は12文字目、ミュー株まで確認されている。いま日本で第5波を引き起こしている5番目のデルタ株は、これまで流行してきた株と比べて子供が感染しやすく、発症や重症化も引き起こしやすいとされる。ライターの森鷹久氏が、保護者と子供の間に立たされた教員たちの困惑と消耗についてレポートする。
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「デルタ株」の流行により、子供達への感染が拡大する中、夏休み明けの子供達の学校登校についての是非が、あちこちで議論されている。新型コロナウイルスは「子供への影響が少ない」とされていただけに、親や学校が戸惑うことは当然なのだが、一部の保育園や学校ではすでに子供や教師の感染が確認され休校に追い込まれるなどして、親たちが抱く不安は極大化している。そんな親と学校の間に挟まれ苦労しているのが、子供たちと直接向かい合う現場教師たちだ。
「観戦希望の子供達については、7月中には親御さんからの同意書もいただいていて、ほとんど夏休みの予定がないという子供たちも観戦を楽しみにしていました」
東京都内の公立小学校教諭・藤井朝子さん(仮名・30代)が受け持つクラスは、東京パラリンピック競技の観戦を予定していた。感染対策はもちろん、児童たちの日々の健康観察もマストで、全てをクリアした生徒、教師だけが会場へ行くことができる、という前提で、クラスのほぼ全員の子供達が「観戦したい」と口にした。
「当然、心配な親御さんもいて、参加を見送りたいと相談される人もいました。でも、子供達同士で『なぜ行かないの?』と議論になることも予想されますし、そこは慎重に判断していたんです」(藤井さん)
ところが、観戦日が近づくにつれ、子供への感染・発症が確認されている「デルタ株」の流行が報じられた。すると、親たち、そして子供たちの心境に、大きな変化があった。
「別クラスで担任を務める同僚が、子供から『先生ってやばいんでしょ、コロナを気にしてない』と言われたそうです。そのクラスには、かなり強い態度で観戦反対を訴える親御さんがいて、そのお子さんだったんですね。かなりショックを受けたらしく、同僚は校長や教育委員会にも掛け合い、どう対応していいのか聞いたのですが『決まったことなので』といわれるだけ」(藤井さん)
子供の観戦を希望する親からは背中を押され、観戦反対の親たちからは非難を浴び、上司や教育委員会に助けを求めても実質「ゼロ回答」。同僚教師は日を追うごとに憔悴していったという。