動物の細胞を体外で組織培養することで作られる「培養肉」は動物を殺さず、温室効果ガス排出の要因の一つである家畜の肥育と比べて環境への負荷が低いなどの利点がある。シンガポールでは昨年、認可を受けた鶏の培養肉が販売開始された。
日本では研究開発段階で実用化には至っていないが、日清食品グループが東京大学とタッグを組み、「肉厚の培養ステーキ肉」という“夢の肉”の実現に挑んでいる。
「世界中で行なわれている培養肉の研究開発の大半が“ミンチ肉”ですが、弊社は筋肉の組織を体外で立体的に形成する技術を持つ東大と共同研究し、肉本来の食感を持つステーキ肉を培養肉で実現することを目指しています」(日清食品・グローバルイノベーション研究センターの古橋麻衣氏)
まず、ウシ筋細胞を約1億個になるまで培養で増やす。そして、細胞が肉本来の構造に近い状態で整列するシートを作製。シートを積み重ね、約7日間の培養で1cm角の筋組織にする。その結果、2019年、世界で初めてサイコロステーキ状 (1cm×0.8cm×0.7cm) の大型立体筋組織の作製に成功。
培養ステーキ肉は細胞同士を融合し、細長い構造に変化させる必要があり、代替肉の中で最も高度な技術が求められるという。同社は2024年度中の基礎技術確立を目指す。
写真提供/日清食品
※週刊ポスト2021年9月17・24日号