「10年に一度の水害」「前代未聞の降水量」──ここ数年、こんな言葉が飛び交っている。地球温暖化が叫ばれて久しいいま、日本の天気をとりまく状況は大きく変化をとげた。猛暑日、ゲリラ豪雨、線状降水帯……毎年のように水害のニュースが伝えられ、自然災害への備えが改めて注目されているが、異常気象によって変化を余儀なくされるのはライフスタイルだけではない。教育現場では子供たちへの影響を懸念する声が後を絶たない。神奈川県の小学校教諭はため息交じりにこう語る。
「いまは熱中症を懸念して夏場は屋外で遊ばせることができず、子供たちはクーラーの効いた教室で過ごします。このため暑さに慣れていなかったり、外出を避けたりする子供が増え、『熱中症が怖いからセミ捕りにいかない。タブレットで見れば、大体のことはわかるからそれでいい』という男の子もいます。
子供は見て、触って、体験して、知ることで多くのことを学ぶので、自然と触れ合う機会が少なくなることは気がかりです」
別の小学校教諭もこんな不安を口にする。
「昔は授業で『新潟は豪雪地帯ですごく雪が積もるから、冬は2階の窓から出入りします』と教えると、子供たちは『それはすごいね』と興味を持ったのですが、いまは温暖化で雪が降らなくなり、かつての豪雪地帯でもそうした風習がなくなりました。子供が地域の特性を楽しく学ぶ機会が減ったのは残念なことです」
実際に地域が持つ特性は、気象の変化に伴い少しずつ薄れてきている。ウェザーマップ代表で気象予報士の森朗さんが指摘するのは、農作物や生態系への影響だ。
「最近よくいわれるのが、温暖化によって果物の産地が北にシフトしていくことです。たとえば、青森の名産品だったりんごは北海道で多く作られるようになり、埼玉・熊谷のマンゴーや知多半島のパパイヤなど、南国の果物を本州で育てるケースもある。
加えて海水温が上昇してサンゴが生息できなくなると魚類の生息域が変化して漁場に影響するともいわれます。一説によると、これからは下関でフグが捕れなくなるそうです」
こうした生態系の変化は世界規模で起きており、南米では東京23区の5倍の広さの巨大湖が干上がり、亜熱帯地域では植物プランクトンの分布が変化して、海の色が濃くなったことが観測されている。
※女性セブン2021年9月23日号