異常気象による水害リスクが高まっている(写真/時事通信フォト)
止まない雨はない──苦境にあえぐ人に向けて、「いつかその苦しみには終わりが来るはずだ」ということを天候になぞらえて示した慣用句だ。しかし、近年の異常気象によってその前提は覆されつつある。短時間で集中的に、長期間にわたって少しずつ……いずれも甚大な水害をもたらす結果となっている。「止まない雨」に対して、何を備えるべきなのか。
自然と人間の共生は、環境問題に直面するたびに唱えられてきたテーマだが、「止まない雨」が降り続けるいまこそ、いま一度向き合うべきなのかもしれない。国や自治体はこの未曽有の事態に対応すべく、少しずつだが新しい対策を講じ始めている。なかでも注目されるのが、国土交通省が打ち出した「流域治水」という方法だ。熊本県の「緑の流域治水」のアドバイザーを務める環境工学者の島谷幸宏さんが指摘する。
「これまでの防災は堤防やダムなど川への対策が中心でしたが、それだけでなく道路や宅地、農地など、実際に水が流れ込んでくる地点でそれぞれの対策を講じるのが『流域治水』のやり方です。
たとえばアスファルトで覆われていない地面を増やすことで雨水を吸収したり、タンクを設置して雨水をためることで流れる水の量を分散します。実際の水害では、降水量のうち地域の処理能力を超える10%があふれて氾濫するため、流れる水の量を少しでも分散できればずいぶん助けにもなる。
さらに、この雨水を各家庭でためられるような取り組みも実践しています。うまくためておくことができれば、全体の水量を減らすだけでなく、大災害時にトイレを流す水としても利用できて一石二鳥です」(島谷さん)
災害の原因となっている雨水を上手にため、非常時に生かすことができたなら、「自然との共生」はもうすぐそこだろう。こうした取り組みとともに、個人レベルでいますぐできることとして、多くの専門家が口をそろえて推奨するのが「ハザードマップの確認」だ。洪水や土砂災害などさまざまな種類があり、自治体の役所やネット経由で入手できる。防災アドバイザーの岡本裕紀子さんはいう。
「西日本豪雨や令和2年7月豪雨の球磨川の氾濫では、おおむねハザードマップの予測通りに浸水被害が生じました。これらの事例からマップを事前に確認することは命を守る切り札だといえるでしょう。