長引くコロナ禍で人と会うことすらままならない日々に、前向きな気持ちになれず悶々と暮らす人も多いのではないか。今秋98歳になる佐藤愛子さんの最新刊『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』と、このたび文庫化された『増補版 九十歳。何がめでたい』には、そうした人生の悩みに答えたエッセイが収録されている。「読んだら元気をもらえた」「スカッとした」という感想が続々と届く理由はここにある。
強くなるコツは?
「佐藤さんのように強く生きたいです。コツを教えてください」
佐藤さんのもとにはこうした手紙が度々届くという。ちょっとしたことでウジウジし、特にいまは先が見えない不安から、つい鬱々とした気持ちに襲われがちだが―佐藤さんは『増補版 九十歳。何がめでたい』で「コツ? そんなものあるかい」とまず断じた上で、こう綴る。
《まず『暴れ猪』になることが必要なのです。人に迷惑をかけ、呆れられたり怒らせたり憎まれたり、それにもめげずに突進する。強く生きるとは満身創痍になることです。だから強く生きるなんてことは考えない方がいい。佐藤愛子を『人生の反面教師』として参考にするのなら、別ですが……。私はそうお答えしたい》(「二つの誕生日」より)
また別の項でもこんな力強い愛子節が。
《人はみな多かれ少かれ、自分の人生を自分なりに満足いくものに作るために目に見えぬ血を流しているのです。当りさわりのない人生なんて、たとえ平穏であったとしてもぬるま湯の中で飲む気の抜けたサイダーみたいなものです》(「人生相談回答者失格」より)