9月17日から公開される映画『マスカレード・ナイト』。木村拓哉主演で大ヒットした映画の第二弾で、ホテルを舞台にさまざまなドラマが展開される。ホテルが舞台となることの強みについて、過去の作品を振り返りながらコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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容疑者は仮面を被った500人! 累計450万部突破の東野圭吾の小説シリーズを実写化した『マスカレード・ホテル』(2019年)の続編『マスカレード・ナイト』。
舞台は前作と同じ超一流ホテル「コルテシア東京」。大みそかに行われるカウントダウンパーティー“マスカレード・ナイト”に殺人犯が現れると警察に匿名の密告状が届く。犯行予告のタイムリミットは24時間。捜査本部に呼び出された、木村拓哉演じる破天荒な刑事・新田浩介は、再びホテルマンに扮し、生真面目なコンシェルジュの山岸尚美(長澤まさみ)と組んで潜入捜査にあたる。
密告者、未解決事件、仮装パーティー、迫りくる犯行時間、新田が魅せるアルゼンチンタンゴなどなど、今回も複雑にしてゴージャスなミステリーになっている。この作品の一番のポイントは、現場が「ホテル」であることだ。
これまでにもホテルは、さまざまな映画・ドラマの舞台になってきた。
ミステリー系の名作のひとつが、1969年に発表された森村誠一の第15回江戸川乱歩賞受賞作品『高層の死角』。高層ホテルの最上階の居室で暮らすホテルのオーナー社長が密室状態で刺殺されたことから始まる難事件。何度かドラマ化され、そのたびに少し設定は違うが、密室のトリックや容疑者のアリバイ崩しなどは、みどころとなってきた。
長くホテル勤務をしてきた作者の原作を読むと、発見者となるルームメイド主任(キャプテン)が、コーヒーポットの保温具合を確かめたり、客室のドアをどの程度の強さでノックすればよいかなど、きめ細かいサービスを心得ていることがよくわかる。こうしたプロの心得や洗練された応対は、ホテル作品の魅力のひとつだ。
『マスカレード・ナイト』の新田も、前作では「『いらっしゃいませ』では15度、『ごゆっくりお過ごしください』では30度、『申し訳ございません』では90度」といわれるお辞儀や、制服の上着の前での手の組み方などの所作を身につけていった。きっちりした制服ドラマでもある。