「医療逼迫」が叫ばれて久しいが、その裏でコロナ患者を受け入れていない病院が数多くある。そこには、救える命を見捨てる病院側の身勝手な都合があった。
感染拡大のピークを超えつつある昨今だが、都内の重症患者は208人、自宅療養者は6800人(9月14日現在)。病床不足を理由に救急車で10時間以上たらい回しにされるケースも報告されており、依然として予断を許さない状況が続く。
こうした現状から、都内各地では「野戦病院」の設置が進んでいるが、その裏でコロナ病床はまだまだ空いている。
コロナ患者を受け入れ可能と申告していながら、使用されていない「幽霊病床」が多数あるのだ。
日本テレビの報道によれば、8月31日時点で都内の確保病床(コロナ患者をすぐに受け入れ可能な「即応病床」)は5967床あったが、受け入れられた患者は4297人で、病床使用率は72%。個別に見ると、病床使用率40%以下の病院が27施設、0%の病院が7施設もあったという。
使用率100%の病院が50施設あるなか、“受け入れ格差”が浮き彫りになった形だ。
「軽症患者しか対応できない、コロナ患者と通常患者の動線を分けられない、とか何かと理由を付けて受け入れを断わる病院が多いのが現実です」(都内病院関係者)
悪質なのは、そんな病院が「補助金」をもらっていることだ。厚労省はコロナ病床を確保した病院には1床につき最大1950万円の補助金を出している。
「空床でも一日7万1000円の補助金が出ます。コロナ患者用のICU(集中治療室)を用意すれば1日40万円以上が支給される。患者は受け入れないがカネだけはもらう。そんな病院がいくつもあるんです」(同前)
尾身会長の病院は3割空床
本誌・週刊ポストが厚労省関係者から独自入手した資料によれば、幽霊病床は日本のコロナ対策の砦たる「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長の足元にも多数あった。
「取り扱い注意」と書かれたその資料には、尾身氏が理事長を務める「地域医療機能推進機構」(JCHO)が都内で運営する5病院のコロナ病床使用率が記載されている(8月10日時点)。
それによれば、確保病床数158床に対し、受け入れ患者は111人。病床使用率は70%で、3割が空いていることになる。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「JCHOのような公立病院には『応諾義務』といって、公衆衛生危機には患者を受け入れるということが法律に明記されている。にもかかわらず確保病床に3割も余裕があるというのは大変な問題です。JCHO傘下の都内5病院の全病床は約1500床ということを鑑みると、そもそも確保病床自体が少なすぎる。
また、JCHO傘下の東京城東病院(江東区)は確保病床がいまだ0です。報道陣にこの点を指摘され、9月下旬からようやく50の病床を用意するとのことですが、対応が遅すぎます」