全国で新型コロナウイルスの新規感染者が減少傾向をみせ、安堵の声が広がる一方で、これから冬に向けて感染が再拡大するだろうという懸念も大きい。できる限りの対策をしておく必要がある中、現実味を増してきたのが「ブースター接種」と呼ばれるワクチンの3回目接種だ。いつ、どのワクチンを、どのようにして選ぶべきなのか、ワクチン接種の近い未来を追う──。
9月10日に開催された、新型コロナワクチンの副反応を議論する厚労省の専門部会。そこでは、接種後の死亡事例が9月3日までに1155例にのぼったことが報告された。内訳はファイザー1127例、モデルナ28例で、前回の報告(8月25日)から62例増えた。
強い副反応や相次ぐ死亡事例に不安の声も上がる中、政府は6日、「3回目接種」の方針を明かし、13日には河野太郎ワクチン担当相(58才)がテレビ番組で「(3回目に)充分なワクチンの確保は、もうすでにしている」と明言した。
海外ではすでに3回目接種がスタートしている国は少なくない。
“ワクチン先進国”のイスラエルでは、デルタ株による感染再拡大を受けて、7月30日から60代以上を対象に3回目接種を開始。29日には対象を12才以上に拡大し、9月1日時点で人口の2割以上にあたる約200万人が3回目を接種済みだ。イスラエルの研究者によると、3回接種した人は2回だけの人に比べて、感染と重症化のリスクが約10分の1に低下したという。
フランスでは、9月から高齢者など感染リスクの高い人を対象に3回目の接種を始め、来年初めまでに1800万人に3回目接種を完了したいとしている。アメリカも「2回目の接種完了から8か月を過ぎた国民」を対象に9月下旬から3回目接種を始めるという。
東京都医師会副会長で角田外科消化器科医院院長の角田徹さんはこう語る。
「これまでのデータでは、2回目のワクチン接種を終えた後、2週間くらいかけて抗体の量がピークになり、しばらくその状態が続いてから、徐々に抗体の量が下がり始めます。つまり、ある時期には必ず3回目のワクチンが必要になる。イメージとしては欧米のように8か月ごとに1回とか、年に1回のペースで今後もワクチンを接種し続けることになるでしょう」
実際、藤田医科大学がファイザー製ワクチンを接種した209人の大学教職員の血液中抗体価を調査したところ、3か月後にはピークの約4分の1に減少していたという。
8月下旬には東京・港区で男性看護師2人と女性薬剤師1人が、無断で3回目接種を行っていたことが判明した。
ある医療従事者はこう声を潜める。
「もちろん無断でワクチンを打ったのは悪いことですが、5月までに2回目の接種を終えている医療従事者は、すでに抗体価が低くなっている。ブレークスルー感染への不安から、3回目のワクチンを打ちたくなる気持ちは理解できます」