世界でも有数のスピードでワクチン接種をすすめ、いち早くマスクなしの日常をとりもどしたはずのイスラエルだったが、新型コロナウイルスが再度流行し、屋内マスク着用を再び義務化した。この事実からみても、ワクチン2回接種したことは、コロナウイルスと無縁の生活を送れる保証にはならない。ところが日本では、先に2回接種を終えた人たちのなかに、マスクも3密も気にしないどころか、ワクチンを打てていない人を差別するかのような言動を乱暴にぶつける人たちがいる。ライターの森鷹久氏が、ワクチン2回接種を終えた人たちの勘違いによって起きつつある社会の不和についてレポートする。
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9月上旬、昼下がりの埼玉県某市内では、「新型コロナウイルス感染拡大中」であることを知らせる市の防災無線の放送が、不要不急の外出の自粛、消毒など感染対策を徹底するよう呼びかけていた。自宅でリモートワーク中だった市内在住の会社員・中原龍也さん(仮名・40代)は、この放送を複雑な思いで聞いていた。
「近くの公園では、ゲートボール大会が開催されていて、高齢の参加者が十数人はいたと思います。ボールを打つカーンという音は、早朝の7時頃から聞こえていて、ほとんど自宅から出られない娘(小5)は、うらやましそうに『いいなあ』と」(中原さん)
実は、ゲートボール大会が行われていた公園には、数年前までは滑り台やブランコなど「児童公園」らしい遊具がいくつも設置されていた。娘が生まれてはじめてブランコに乗ったのも、はじめてかけっこをしたのもこの公園である。しかし、遊具に老朽化が見られると使用禁止の張り紙がなされたのは3年ほど前のこと。古い物が撤去され、新しい遊具が設置されるのかと期待していたが、跡地はガランとしたまま。
「ちょうどその頃、公園で遊ぶ子供の声がうるさいとか、ボールで遊んでいて危ないということで、公園内での禁止事項が張り出されました。ボール遊びは禁止、騒ぐのは禁止になりました。子供たちの場所ではなくなったんです」(中原さん)
こうした経緯があっただけに、コロナ禍で外に出ることもままならない子供が、公園で楽しそうにゲートボールに興じる高齢者をうらやましく眺めていることに、正直腹が立った。高齢の自治会長にその「是非」を問うた所、返ってきたのは驚くべきき答えだった。
「私は、まだ自治体の接種を1回受けただけで、12歳にならない子供はそもそも打てない。高齢者はワクチン接種も早く、すでに2回打ったという方も多く、外出する人が増えているというんです。ワクチンを打てば、コロナにかからないから安全なのだと」(中原さん)