国の医療費削減の切り札のひとつである「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」。昨年以降、その安全性に疑いの目が向けられる事態が相次いで発生した。
富山に本社があるジェネリック大手「日医工」では、出荷検査で不合格となった錠剤を取り換えて再試験を行ない、錠剤を砕いて再加工するなどの不正が発覚した。福井県の医薬品製造「小林化工」では工場担当者のミスでジェネリックの経口抗真菌剤「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤の成分が混入していた。両社とも今年になり、業務停止命令の処分を受けた。
相次ぐ不祥事に危機感を募らせた厚労省は、今年6~7月に都道府県と合同で、全国の後発医薬品製造工場など46施設に一斉の抜き打ち検査を実施した。その結果、9つの施設で品質への影響を否定できず、改善が必要だとされる「中程度の不備」が確認された。
厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の担当者が指摘する。
「すべての後発医薬品メーカーに問題があるわけではないが、日医工と小林化工に連続して業務停止命令が下ったように、近年は後発医薬品メーカーの製造管理の不備が目立つ。同様の事例が発生しないよう、今後は検査体制を強化したい」
今回の検査で指摘されたのは、品質管理試験のスケジュールの遅れや、人員不足の懸念などだ。なぜ近年になって問題が頻出しているのか。薬剤師の深井良祐氏が指摘する。
「国のジェネリック推進で新規参入が急増して、現在は1つの製品に対し、10~20社もの後発医薬品メーカーが存在します。過当競争のうえ薬価の安いジェネリックは利益が薄く、メーカーは人件費や調達国変更による材料費削減などをする傾向がある。その結果として、工場の管理体制などが緩くなります」
日医工の不正については、同社が法律事務所に依頼して今年3月に作成された調査報告書で経緯などが詳述されている。
報告書によれば、10年ほど前から出荷試験で不適合(逸脱)の製品が見つかるたびに〈逸脱会議〉と呼ばれる会議が開かれ、逸脱品を砕いて再度、錠剤化するなど、国が認めていない手順での出荷が繰り返されていた。
ジェネリック医薬品の需要が拡大するなか、〈対応できる人員、設備が整っておらず、製造部、品質管理部のいずれもひっ迫した製造スケジュール、試験スケジュールの中で(中略)逸脱会議の開催頻度も増加〉したのだという。製薬企業を信頼してきたユーザーであれば、工場の実態に絶望的な気持ちになるのではないだろうか。