映画番組『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、昨年から「もう一度見たい映画」を視聴者から募集。その結果、放送されたのが1980年代ハリウッド映画の傑作の数々だった。それほどこの時代の映画はおもしろかったのだ。
「1970年代前半までは、監督が作りたい映画を追求する、いわば芸術作品が多かったのですが、『ジョーズ』(1975年)、『ロッキー』(1977年)などの大ヒット映画の登場で大資本が入るように。それにより1970年代後半から1980年代にかけては、ビジネス手腕に長けた人材が映画会社に加わり、映画の作り方が変わっていきました」(映画評論家・町山智浩さん)
監督の意向よりも、観客が見たいものが重視され、市場ではマーケティングが実施された。その結果に基づいた作品が作られるようになると、観客も増え、巨額を投じた娯楽大作が多数生み出されるようになった。
「この時期は、映画と音楽が連動した“メディアミックス”も盛んになり、映画に使われた音楽やファッションも流行を牽引していきました」(町山さん)
たとえば、レイ・パーカー・ジュニアによる『ゴーストバスターズ』(1984年)の主題歌は、アメリカはもちろん日本でもヒット。オリコン洋楽シングルチャートで6週連続第1位を記録した。1980年代ハリウッド映画はさまざまな流行を巻き込み、一大産業となったのだ。
ルーカスとスピルバーグがハリウッド映画界を牽引
そんなハリウッド映画を牽引したのは、『スター・ウォーズ』シリーズ(1977年〜)を製作したジョージ・ルーカスと『E.T.』などの監督スティーヴン・スピルバーグだと、映画大好き芸人のこがけんさんは言う。
「それまでは、“子供だまし”と扱われることもあったSFというジャンルを確立させた立役者だったと思います。また、好景気に沸く1980年代は、夢や希望にあふれた作品が好まれましたが、一連のスピルバーグ作品に見られる、シリアスなシーンにギャグを入れこむスタイルは、時代の潮流に合っていたと思います」(こがけんさん)
荒唐無稽な冒険活劇やSF、激しいアクション作品が多数受け入れられたのは、より刺激的なエンターテインメントが求められたからだろう。
「この時代の作品は、いま見ると残酷な描写や差別的な表現が意外と多いんです。しかし当時の観客には、それらを“ノリ”で笑い飛ばせる大らかさがあった。映画(フィクション)と現実を区別して楽しめる余裕は、好景気が土台にあったからこそと言えるでしょう」(こがけんさん)
コロナ禍の鬱屈した雰囲気のいま、心の余裕はないかもしれない。しかし当時を思い出しながら改めて1980年代映画の世界に没頭すれば、ひとときの夢を楽しめるだろう。
そこで女性セブンは読者1763人を対象に「80年代ハリウッド映画総選挙」として、好きな80年代の名作映画についてのアンケートを実施。その結果を1位から10位にまで紹介します。