花田光司氏(元横綱・貴乃花)の長男で靴職人の花田優一氏が週刊誌記者を弟子にとり、靴作りの修行中に起きた出来事をレポートする異色の“交換日記”連載企画。今回は昼食中、ふいに記者から「父親について」の爆弾質問が飛んできた際のやり取りを振り返る。(別稿で週刊誌記者のレポートあり)。
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僕らはいつも、工房近くの定食屋で昼食をとる。住宅街にひっそりと佇む店のベンチには、毎日地元の人たちが座って並んでいる。とんかつ定食やハンバーグ定食がオススメで、ビーフシチュー定食も美味い。
この日は、僕が先約で遅くなってしまったこともあり、いつもの昼食の場所で直接待ち合わせをすることになった。僕はいつも通り、ヒレカツ定食のしそご飯半分盛りを頼んだ。西さんはミックスフライ定食のご飯大盛りを頼んだ。「白米を大盛食べないと、健康が保てない」らしい。ワンパクな40歳独身男性である。
職業は、靴職人と週刊誌記者。年齢は、25歳と40歳。性格は根本的に大きく違う二人が、日々昼食を共にしていると、話す内容は尽きてくるものだ。
西さんが僕にする会話というと、「最近はどうですか?」という漠然とした質問ばかり。
僕は、「一緒にいて、ゴシップとかではないところで僕に聞きたいことないですか?」と聞いた。すると西さんは、一瞬逡巡し、
「お父様との関係が修復することはあるんですか?」と言った。
“ゴシップとかではないところで”という条件を、完全に無視した西さんを前に、ああ、そうだ、週刊誌記者だった。と自分に言い聞かせて、茶碗にこびりついたご飯粒をつまんだ。
工房での過ごし方は“俺”が決める
私はいつも数足の靴の作業を並行して進めていく。革を足型に馴染ませる時間、木型に塗ったパテを乾かす時間、染料を染み込ませる時間、様々な“待つ”時間を有効に使う為だ。しかしながらこの日は珍しく、一通りの作業を済ますと、湿気が増えてきたこともあって、待ち時間が重なってしまった。これも良い機会だと思い、2階にある絵のアトリエに降りて、絵画の製作を進めることにした。