シルクエラスチンの構造と粉末画像

シルクエラスチンの構造と粉末画像

「従来の再生治療は細胞を体の外に出して培養、加工して再び体内に戻すため設備や薬剤、人材などに費用と時間がかかります。その点、シルクエラスチンを足場(移植の基盤)に使えば切除した半月板を砕き、再び欠損部に戻すだけ。そのような手術が1回で済む再生治療を目指し、研究を続けています」(安達教授)

 研究は2つのアプローチから進められている。1つは縫合術での癒合率向上と、もう1つは部分切除における欠損部の再生だ。

 * * *
 加齢やスポーツなどで半月板を損傷すると、将来的には変形性膝関節症に繋がる。半月板損傷治療の約8割は変形性膝関節症のリスクが高い部分切除術だ。そこで、前号で説明したように機能性タンパク質のシルクエラスチンを使った半月板再生の臨床研究が進行中だ。これは切除した半月板を利用する組織再生と縫合での癒合率を上げる研究で、来年からヒトへの医師主導治験が始まる。

 歩行の際、クッションの役割を担う半月板は加齢やスポーツによる外傷などで損傷すると変形性膝関節症の大きな引き金になる。半月板はその大部分に血管がないため、損傷した場合、必要な細胞や栄養分も届かず、修復は困難となる。現在の治療は損傷部に血管があれば関節鏡を使い縫合術を行なう。しかし、血管が通ってなく、複雑に損傷したケースでは損傷個所を部分切除する。

 引き続き、広島大学大学院医系科学研究科整形外科学の安達伸生教授に聞いた。

「難しいとされている半月板再生治療に希望を見出したのは、前号で紹介した機能性タンパク質のシルクエラスチンとの出会いがきっかけです。シルクエラスチンは細胞との親和性や細胞遊走力、維持力がある上に、温度や濃度によって粘度の高いゲル状やシート状、スポンジ状など使用箇所に応じて加工できるといった特性を有しています。これを半月板再生の足場(移植の基材)として利用すれば、複雑な損傷にも対応可能だと考え、研究を始めたのです」

 半月板の再生研究では2つのアプローチを行なっている。1つは縫合術に対するもので、損傷した箇所にゲル状のシルクエラスチンを直接留置し、その後縫合して癒合率の向上を図る。また、従来は縫合術には適応しない血管が少ない箇所の損傷に対しても同様の治療を行なうことにより、適応範囲を広げる取り組みを実施している。

関連記事

トピックス

荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
舞台『シッダールタ』での草なぎ。東京・世田谷パブリックシアター(~2025年12月27日)、兵庫県立芸術文化センター(2026年1月10日~1月18日)にて上演(撮影・細野晋司)
《草なぎ剛のタフさとストイックさ》新幹線の車掌に始まり、悟りの境地にたどり着く舞台では立見席も
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
「異物混入」問題のその後は…(時事通信フォト)
《ネズミ混入騒動》「すき家」の現役クルーが打ち明ける新たな“防止策”…冷蔵庫内にも監視カメラを設置に「なんだか疑われているような」
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン