総裁選で岸田文雄氏の選対顧問に就いた甘利明・自民党税調会長のツイッターが熱い。連日のように「岸田文雄さんの人間性解剖シリーズ」と題して岸田氏の魅力を語る動画をアップ。「人徳は政界No.1の岸田さん。胆力が備わり、闘うリーダーの目になって来ました。翔べ!令和の劉備玄徳!」と持ち上げたかと思えば、ツーショットの自撮り写真を載せ、「長い付き合いだけど、考えてみたら2人で自撮りって初めてだ!マスクがなければ『イケメンの二人』ってタイトルにしようかな」と絵文字つきでツイートまでしている。
甘利氏が所属する麻生派からは河野太郎氏が出馬しているにもかかわらず、あまりに露骨な岸田推し。なぜここまで肩入れするのだろうか。麻生派中堅が言う。
「甘利さんは岸田さんに勝って欲しいという気持ち以上に、河野さんに勝って欲しくないという気持ちが強いと思う。河野さんの出馬に派内でもっとも強硬に反対したのが甘利さんでした。甘利さんは原発推進派で、脱原発を主張してきた河野さんとは考えが合わない。しかも河野さんが総理になってしまったら派閥が代替わりしてしまい、麻生さんからの禅譲を狙っていた甘利さんの立場がなくなってしまう。河野さんが総裁になることは是が非でも阻止したいはずです」
甘利氏は、河野氏が総裁選出馬の意向を固めた直後、「菅(義偉)総理がダメだと、たたかれた一番の原因がワクチンの迷走といわれているのに、ワクチン担当大臣の評価が上がるとは、よくわからない」と国会内の講演で皮肉を述べた。ここまでくると、政治的な評価を超えた個人的な感情があるとしか思えない。前出・麻生派中堅が2人の因縁の歴史を語る。
「甘利さんの父親の甘利正氏は、神奈川県の依知村(現・厚木市)村長などを務めた後、同じ神奈川閥の縁もあり、河野洋平氏が自民党を離党し結成した新自由クラブから衆院選に出馬し初当選を果たしています。その後継として甘利さんも新自由クラブから議員生活をスタートしています。甘利家にとって、父の河野洋平氏はまさに恩人。そういった経緯があるため、甘利さんにとって河野さんは、“生意気な後輩”とは思いながら、一定の気を遣わなければならない存在だった。
そんな2人の確執が決定的となったのは、震災後、脱原発を唱えた河野さんが新聞紙上で原発推進派の甘利さんを名指しして“次の選挙でそういう議員を落とすしかない”と言い放ったことです。甘利さんは激高し、さすがの河野さんも後から釈明したそうですが、そのときの恨みはいまだに忘れていないはず。甘利さんはそういった河野さんの“軽さ”が許せず、対照的に堅実で知られる岸田さんに肩入れしているのではないでしょうか」