三浦:メディアを通じて「予測」が過信され、政府の政策を直接左右してしまうところに問題があります。いま、政治家は専門家の助言に必ず従うべきだとされていますよね。予測は厳密なものではないのに、それに基づく営業自粛で店が潰れ、人々が自殺してしまっても、専門家は決して責任を負えません。小中学生や女性の自殺が増えても、専門外だからと思考の範疇に入れないのです。コロナ死だけ減ればいいわけではないのですが。
小林:2020年の超過死亡はマイナスで、例年より死者が減ったんです。死者が減るパンデミックって何なのか。過剰対策だったことは間違いなくて、例年なら死んでいた多くの高齢者が生き延びたんですが、その陰で、自粛の影響で子供や女性が犠牲になっている。
(第3回に続く)
【プロフィール】
東浩紀(あずま・ひろき)/1971年東京都生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。株式会社ゲンロン創業者。近著に『ゲンロン戦記――「知の観客」をつくる』(中公新書ラクレ)。
小林よしのり(こばやし・よしのり)/1953年福岡県生まれ。漫画家。近著に『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論3』(扶桑社)。井上正康氏との共著『コロナとワクチンの全貌』(小学館新書)が9月30日発売予定。
三浦瑠麗(みうら・るり)/1980年神奈川県生まれ。国際政治学者。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。株式会社山猫総合研究所代表。近著に『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』(文春新書)
※週刊ポスト2021年10月8日号