ワクチンを打っても、感染者数が減っても、緊急事態が解除されたとしても、一向に元の世界に戻る様子はない。私たちはいつまでコロナに怯えて閉じこもるだけの日々を送るのだろうか。東浩紀氏(批評家・作家)、小林よしのり氏(漫画家)、三浦瑠麗氏(国際政治学者)が討論した。(全3回の第2回)
東:人流という“謎数字”についてどう思いますか?
小林:人流と新規陽性者の増減がたまたま一致した部分だけ切り出してきて、わーわー言っているだけでしょう。
三浦:人流の感染に与える影響は複合要因の一つでしかないのは明らかですね。そのため、正確な交通量のデータを用い、ビッグデータ分析の専門家チームで検証してきました。メディアが報じるスマホの位置情報に基づくデータには元々かなりの誤差があります。前週比8%増などと報じていますが、この程度は誤差の範囲内なんですよ。
小林:人流と感染拡大に相関があるかどうかという以前に、使っているデータの誤差が大きいと。
三浦:はい。分科会に提出される研究者のシミュレーションも、誤差の大きい人流データに基づいています。飲食店に酒の提供を自粛させ、時短営業を強制するといった私権制限が、そうした粗いデータに基づく「何万人感染」といった予測から導き出されているんです。
東:テレビが垂れ流している京大の西浦博教授の「予測」にしたって、直近の感染者数の伸び率を未来に当てはめているだけで、エクセルで計算できるレベルなんですよね。彼は、第五波で東京都は8月末に1日の新規陽性者が1万人に達すると予測していましたが、実際はお盆明けから下がり始めて3000人程度だった。
三浦:ビッグデータ分析の利点は、過去の波にまつわるデータをすべて投入することで、人間にとって不可知の要因を束ねた変数にすることができることです。人流抑制に意味がないわけではない。他の要因も大きいというだけです。
うちのチームは、お盆に人流が減少し翌週にピークアウトすると予測しており、現実とほぼずれませんでした。西浦氏が休暇を危険視していたのと正反対ですね。
いわゆる専門家が一定の前提を置いたモデルは西浦氏に限らず軒並み外している。それは、不可知の要素をモデルには入れ込めないから。だから外れるのです。
東:西浦さんを擁護する人たちは、あれは予測ではなく試算であって、極端なことを言って警告しているんだと言うんですけど、それを根拠に五輪は中止しろとか、政策にまで踏み込んでいる。責任は生じます。