日本では7月から、海外渡航者向けに「ワクチン接種証明書」が発行されている。さらに、年内をめどにスマホアプリで証明書を表示できるようになる予定。この接種証明書が、今後「ワクチンパスポート」として、さまざまな場面で利用されることになるという。そんなワクチンパスポートはどのように運用されていくのだろうか。(全4回の第2回)
忘れたらどうなるの?
すでにワクチンパスポートが普及している諸外国では、不携帯には厳しい制限が課される。
「フランスでは至るところでワクチンパスポートや陰性証明書を確認されます。接種可能な12歳以上はそうした書類がなければ、飲食店は当然ながら、スーパーやデパート、病院も含め、多くの施設に入ることができない。飲食店での確認はニューヨークなど多くの国や州で実施されていて、グループで利用する場合、一人でも不携帯ならその人は利用することができません」(欧州を拠点に活動するジャーナリスト・宮下洋一氏)
しかし、国内の生活では不携帯によるトラブルは少ないと予想される。
「政府としては持っていない人が“飲食店に入れない”といった不利益を被るような利用は避けたいと考えています。もともとワクチンは任意での接種ということになっているので。民間利用が進むことでケースごとの判断になりますが、ワクチン接種の有無や接種証明の提示の有無による不当な差別的取り扱いは是正勧告していく方針です」(内閣官房副長官補室・ワクチン接種証明推進担当)
ただし、海外に入国する際には注意したい。
「“接種証明書がないと入国できない”という国はインドネシアやパラオなど6か国(9月22日時点、以下同)です。アメリカが11月以降、入国する外国人にワクチン接種を義務付ける方針を示したので、接種証明書を不携帯の日本人は入国が拒否されます」(内閣官房)
外国でも使えるの?
日本で発行されたワクチンパスポートを有効としているのは35の国と地域。だがどのワクチンを打ったかによって無効になるケースも。
「国ごとに認可したワクチンと認可していないワクチンがある。たとえば、アメリカはファイザー、モデルナ、ジョンソン&ジョンソン製はOKだが、アストラゼネカ製は承認されていません。仮にアストラゼネカのワクチンパスポートを持っていたとしても、米国での滞在に制限が加わる可能性がある」(鳥海氏)
ワクチンパスポート以外にも証明書が必要な国もある。
「フランスでは日本で発行されたワクチンパスポート、パスポート、航空チケットの3点を用意して、ネット上で『衛生パス』を事前に取得するか、現地で抗原検査を受けなければ飲食店や商業施設、公共機関を使えません」(同前)
(第3回に続く)
※週刊ポスト2021年10月8日号