YouTuber・HIKAKIN(32)のチャンネル登録者数が1000万人を突破した。開設から10周年にして偉業を達成した彼は、なぜファンに愛され続け、そして新たなファンを獲得し続けてきたのだろうか。
1000万人を突破したのは、2011年に開設したYouTubeチャンネル「Hikakin TV」。それ以前から別のチャンネルでYouTuberとして活動し、2013年にはゲーム実況に特化した「HikakinGames」やビデオブログ用の「HikakinBlog」なども開設しているが、その中でも「Hikakin TV」はメインと言えるアクセス数を誇るチャンネルだ。
まだ世間でYouTuberという職業が浸透していない頃から活動を始めたHIKAKINは、今では計4チャンネルを運営、総再生数は100億回以上にもなる。まさにYouTuberの代表格と言っていい存在。国内での先駆者でありトップを走り続ける現役選手であるとも言える。
この10年、さまざまなYouTuberが登場するようになった。しかし、知らぬ間にフェードアウトする者や、炎上騒動を巻き起こして自滅する者もいる。そうした中、なぜHIKAKINの人気は上昇し続けているのだろうか。ソーシャルメディアの動画マーケティングに詳しい、シンクタンク・電通メディアイノベーションラボの天野彬・主任研究員はこう分析する。
「『HikakinTV』を開設してから10年間ずっと続けてきた、継続の力がまずはとても大きいと思います。一時期人気を博してもフェードアウトしてしまったり、バズる動画を1本か2本作ってネタが底をついてしまったりする人も多い中で、HIKAKINさんは常にヒットを打ち続けている。そこには企画の面白さだけでなく彼の人柄にも魅力があるはずで、視聴者がつい応援したくなる気持ちを抱いてしまうようなキャラクターなんですね。
YouTubeの世界は継続の力がそのまま有利に働く側面もあります。今ではYouTuberとして活動する人も増えて競争がどんどん激しくなっていますが、その中で動画のストックが大量にあるということはそれだけでメリットなんです。『HikakinTV』の動画は約3000本ありますよね。その分、オススメの動画に出てきたり、検索した時にキーワードに引っかかったりする機会も増えるので、輪をかけてHIKAKINさんに注目が集まることになります。
それに、今はどれだけ人気を博していても、何か不祥事を起こして世の中から批判の矛先を向けられると、あっという間に失脚してしまうような時代です。特にYouTuberは新しい職業でもあるので、イメージが悪くなると一斉に叩かれてしまうことが多い。そうした中でHIKAKINさんは、ネット上で“聖人=セイント”と呼ばれているように、道を外れたことを絶対にしない。
おそらくHIKAKINさん自身、YouTuberの社会的なポジションを向上させたいと考えていらっしゃるのでしょう。今やYouTuberのマネジメント事務所の代表格として知られるUUUMのファウンダーの一人でいまなお最高顧問のポジションにあります。ある種の大黒柱として責務を全うしようという熱意も感じます。実際に、新型コロナウイルス対策をめぐって小池都知事と対談する動画を出したり、災害への慈善活動を行ったり、社会的責任を担う活動をされていますよね。1000万人突破後の動画でも、今後は登録者がひとり増えるごとに10円を一生募金し続けることを発表していました。そのように時間をかけて信頼感を醸成しているからこそ、他のYouTuberが問題を起こすたびに相対的に株が上がるという構図も出来上がっているのです」