新型コロナのワクチン接種が進み、9月下旬時点で2回の接種が完了した人は国民の半数を超えた。第5波の新規感染者はピークアウトし、東京では4回目の緊急事態宣言が9月末に解除となる。ところが、ここにきて集団免疫の達成は難しいとの声が専門家から上がっている。どういうことなのか。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が解説する。
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新型コロナは、ワクチン接種が進んでいる欧米諸国と、進んでいない東南アジアやアフリカ諸国の間で感染拡大リスクの差が広がっている。
ワクチン接種を進めて、早期に集団免疫を確立し、感染を終息させる――各国とも、そんな戦略のもとで接種を進めてきたようだ。日本でもワクチンをコロナ対策の「切り札」と位置づけ、国、地方自治体を挙げて接種に取り組んできた。政府は10月末までに希望者全員のワクチン接種を完了したいとして、接種のスピードを上げている。
ところが、イスラエルやイギリスなどのワクチン接種“先進国”では、感染した人の重症化は抑えられているものの、新規感染者の再拡大がみられる(別掲図参照)。
9月3日に、政府の新型コロナウイルス対策分科会がまとめた提言には、
「我が国において全ての希望者がワクチン接種を終えたとしても、社会全体が守られるという意味での集団免疫の獲得は困難」
といった文言が盛り込まれた。ワクチン接種による集団免疫の達成について、どう考えたらよいか、少し考えてみることとしたい。