日本の最長寿劇画『ゴルゴ13』作者のさいとう・たかを氏が亡くなった(享年84)。7月には単行本201巻が発売され、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定された同作は、これまで湾岸戦争やイラク戦争など現実の時事問題を作品に反映させてきたが、さいとう氏が最後まで悩んだのが、「コロナを描くかどうか」だった。
「週刊ポスト」(2021年3月26日号)で、コロナと表現様式、そして漫画に求められる倫理観について語っていたさいとう氏のインタビューを再録する。
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『ゴルゴ13』ではキャラクターの喜怒哀楽を「目」で語らせていますから、デューク東郷がマスク姿になって口元の動きに変化がなくなったとしても問題はありません。彼に追い詰められたキャラクターの心の乱れや恐れも同様なので、マスクをするかどうかによって作品の魅力が落ちるとは思っていません。
ですが、ゴルゴの世界にコロナを反映させるつもりはありません。
劇画の世界観に「リアリティ」をどの程度持ち込むかは、作家それぞれの考え方だと思います。私個人としては、世の中に振り回されすぎずに読者と向き合いながら、今まで通りに淡々と創作していくつもりです。
ほかの先生方が描いた「コロナ禍を描いた作品」については、読むかどうかも含めて今の事態が落ち着いたら考えたいと思っています。
最近はタバコを吸うシーンを描くことなどに対して「倫理的によろしくない」という風潮もあります。今後こうした動きが行きすぎて、「マスクをしていない姿を描くとはけしからん」などとなることには反対です。
私は倫理観というのは誰かが押しつけるものではないと思っています。読む人に夢を与えるのが劇画の役割だと考えているので、『ゴルゴ13』を世間の目ばかり気にした作品にはしたくはないのです。
ちなみにラブシーンについては、政府も「恋人と密になるな」とは言っておりませんので、是非について考えたこともない。ただそれも含めて、読者の皆さまが良しとするかどうかです。
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ご冥福をお祈りいたします。