常に死と隣り合わせの過酷な現場で、命を張って米国市民の平和を守る日本人女性の姿がある。ロサンゼルス市警察に勤務するYURI氏は2人の子供を抱えるシングルマザーでありながら34歳で警察学校に入学、軍隊並みにの過酷な訓練を耐え抜き、警察官になった。
現在、LA近郊の警察署に勤務するYURI氏は毎朝3時に起床して日課の筋トレをこなし、早朝5時前に出勤する。
「主な任務は地域のパトロールで、勤務中は15kgある防弾チョッキを装着します。私はまだ人を撃ったことはありませんが、銃をホルスターから出すのはほぼ毎日。日本では警察官が盗難車を見つけたらそのまま車に近寄りますが、銃社会のアメリカでは車の中に銃があることが前提。警察官は車に銃を向けながらアプローチする。実際に盗難車のドライバーが警察官に発砲する事件が日常的に起こっています」
映画のようなカーチェイスも経験した。
「いつかやってみたかったのですが、実際に経験するとアドレナリンが出まくって、『これ映画じゃん!』と思いました(笑)。日本ではパトカーが犯人の車に衝突するのはNGかもしれませんが、こちらでは犯人の身柄確保が最優先で、車体をぶつけるのは当たり前。特別な訓練を受けた警察官は、犯人の車の後部にパトカーをぶつけて相手を回転させる『ピット』という技術を習得しています。犯人の車を回転させてから、パトカーを駆け降りた警察官が一斉に相手に銃口を向けてホールドアップさせるんです」
自分の身は自分で守るしかない。YURI氏はプライベートでも24時間銃を手放さない。銃のメンテナンスが趣味となり、時間があれば自宅でネットフリックスを見ながら銃を分解する。
さらに凶悪犯との接近戦に備えて、イスラエル軍発祥の戦闘術「クラヴ・マガ」も身に付けた。
それでも、生命にかかわる危機を迎えることがある。
一人夜勤のある晩、彼女がパトカーを停めてトイレに歩いていると、背後から近づいた何者かに突然首を絞められた。
「私よりガタイのいい薬物使用者で、咄嗟に応援を呼んで銃を取られないよう心がけました。警察官の制服には応援を要請する無線用のボタンが装着されていて、それを押すと近隣の警察署や警ら中の警察官が最優先事項として現場に急行します。私が襲われた時も、咄嗟にボタンを押して相手と格闘している最中に仲間が駆けつけて、危機を脱しました」
こうした突然の襲撃が最も脅威だと語る。
「シューティング(銃撃戦)は心の準備もできるし、厳しい訓練を積んだので対応できます。急に背後から襲われるような状況が最も危険ですね」
※週刊ポスト2021年10月8日号