日本では年内をめどに、スマホアプリで「ワクチン接種証明書」を表示できるようになる予定だという。今後この接種証明書が「ワクチンパスポート」として、さまざまなシーンで活用されることになりそうだ。では、このワクチンパスポートが普及すれば、これまでの“自粛生活”が終わりとなるのだろうか? ワクチンパスポートに関する素朴な疑問にお答えする。(全4回の第4回)
マスクはしなくてもよくなる?
報道で海外の様子を見ると、野球やサッカーなど屋外競技の観客がマスクをしていないのに気づく。ワクチンパスポートがあればマスクなしで生活できるのか。
「マスクはワクチンパスポートとは関係なくて、その国の状況次第です。アメリカでは屋内施設ではマスクの着用が求められますが、屋外では個人の判断に委ねられています。8月にロサンゼルスで大谷翔平の試合を観戦しましたが、6、7月は誰もマスクをしていなかったのに、感染者数が増えていた8月は観客の2割ほどがマスクをしていました」(海外のワクチンパスポート事情に詳しい航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏)
ワクチン接種を義務化し、ワクチンパスポートの所持など厳格な体制を敷くフランスでは、日本と同様の光景が広がる。
「ワクチンパスポートを持っているからといって“マスクを着けなくていい”とはなっていません。スペインでも同じです。フランスやスペインでは、政治家や医療関係者が『ワクチンを打っても安全ではない。油断するな』というメッセージを発している。一方、イタリアもワクチンパスポートを導入していますが、マスクをしている人はごく少数でした」(欧州を拠点に活動するジャーナリスト・宮下洋一氏)
会社が提出を求めてきたら?
グーグル、フェイスブックなどの米企業は、オフィスに出社する従業員に対して、医療上の理由がない限りワクチン接種を義務づけており、受けなければ原則として出社できず在宅勤務となる。
「カリフォルニアにある会社に仕事で訪れましたが、ビルのエントランスで止められ、ワクチンを打っているか確認され、未接種ならオフィスには入れないと言われました」(鳥海氏)
なかでもグーグルは、在宅勤務者の給与を最大25%カットするという方針を示しているため、事実上、ワクチンを打たなければ賃金カットとなる。