平成仮面ライダー10周年作品として製作された『仮面ライダーディケイド』。この作品で視聴者を驚かせたのが、主人公・門矢士の性格。常にふてぶてしさを漂わせ、ファンからは“くせ者”と呼ばれた。演じた俳優・井上正大が語る。
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僕ら世代で役者を志している8割、9割の人は仮面ライダーの主人公を演じたいと願っていますよ。僕もそのひとりだったので、オーディションを受け、1万人以上の応募者の中から、運よく最終選考に残ることができました。
ただ、なぜ僕が選ばれたのかは今もわからない。別に意気込みを訊かれたわけでもないですし、趣味の話をおもしろおかしくしゃべっていただけで。
たぶん、オーディションに正解ってないんですよ。もしかしたら、他の人が質問を受けている間のちょっとした所作や雰囲気が門矢士の一部に通じたのかもしれないですね。
門矢士は演じていて楽しかったです。今までのライダーシリーズには存在しないキャラクターでしたし、渡される台本を読みながら、ワクワクしました。
もちろん、門矢士の立ち振る舞いに賛否両論があったのは知っていましたよ。僕が他のライダーファンなら、嫌いですもん(笑)。それでも、門矢士の性格が放送中にテコ入れされず直されもせず、それこそ回を重ねるごとに、さらにふてぶてしいヤツになっていったので、みなさんに受け入れられたのだろうな、と勝手に解釈しています(笑)。
そういう意味では嫌いだけど無視できないという、いつの間にか悪役さえも超えた異質な仮面ライダーになったのでしょうね、ディケイドは。
50年は歴史の通過点
だから、例えば情報番組などにゲストで出演するときは、けっこう大変なんです。MCの方が「井上さんは仮面ライダーを演じていて……」と紹介してくれるんですけど、素の僕は門矢士のように第一印象がめちゃくちゃ悪い(笑)。話せばいいヤツだとわかってもらえるんですが、とにかく第一印象が最悪なんです。
そこでドッと汗をかくわけです。なにせ世間的に仮面ライダー俳優は爽やかな人だというのが定説のようになっているじゃないですか。とくにお母さんたちの期待を裏切らないよう、なるべく優しそうな笑顔を作るようにはしてきましたね。やっぱり、仮面ライダー俳優になったからには、絶対に子供たちや親御さんたちの夢や願いを壊しちゃいけないと気を付けています。それはもう、オーディションを経て門矢士になることが決まった瞬間から、胸に刻んでいます。