誰もが夢見る“馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏も、馬券生活を夢見て日々、競馬の研究に勤しんでいる。そんな須藤氏が、「運」を呼び込む方法について考えた。
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目当ての馬がハナ差4着なんてのはしょっちゅう。ツイてないと舌打ちして次のレースへ向かうわけだが、そもそもツキ=運ってなんだ? と考えた。秋の夜長だし。
定義は「物事を成就させる成就させないかの、巡り合わせ」(新明解)。「その人の意思や努力ではどうしようもない巡り合わせ」(Wikipedia)というものも。なるほど、こっちの意思は馬券購入まで。レースは見守ることしかできない。
でも、その巡り合わせをコントロールできないものかと思うのも人情だ。巷には「運を味方にするコツ」「強運の法則」なる話が数多ある。
スポーツ紙友人からの又聞きだが、武豊ジョッキーは四半世紀前に「(レースに勝つために)必要なのは技術、知恵、運」と話し、最も大事なのは「運」と断じたという。技術と知恵は当然の前提という第一級の感覚だろうか。
私のような凡人にも、運を呼ぶためにできることもある。気構えだ。「謙虚さ」(米長邦雄・元将棋名人)、「感謝の気持ち」(松下幸之助)、そして「明るさ」(司馬遼太郎)。笑顔が大事というのはどの文献、ネット情報にも共通している。なるほど武さんには全部あるなぁ。
令和の今。勝負の世界で輝く若き三傑は、大谷翔平、久保建英、将棋の藤井聡太だろうか。圧倒的な努力の熱量に加えて、運を引き寄せる条件がそろっている感じ。みんな笑顔が良いよね。
話は逸れるけど、総裁選から身を引いた前総理にはすべてがなかった。特に謙虚さ。言葉を尽くす丁寧さ皆無。国民をナメていた。自ら運を放棄する人が国のかじを取っていたとは。
「運」で思い出すのは勇退した角居勝彦・元調教師への取材である。師は運を信じた。「人間として運気が逃げるようなことはしない」と。ウソをつくとか約束を破るとか、仕事の手を抜くとか。自分の胸に翳りがあると馬の走りにも影響するのではと。ゲン担ぎ以前に、人間としてのまっとうな立ち居が大事というわけである。