いよいよ秋のGI戦線が開幕する。第一弾の舞台は数々のドラマを生んできた電撃の中山芝1200m。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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今年3月の高松宮記念は、勝ったダノンスマッシュから9着のセイウンコウセイまでが0.5秒差。着差にすると2馬身半ほどだ。スプリント重賞ではよくあることで、2017年のスプリンターズSでも、勝ったレッドファルクスから16着のネロまでは0.7秒しか離れていなかった。
そんな闘いだから、道中のちょっとした不利でも致命的だし、3コーナーでの位置取りなど、そのときの状況一つで順位は変わる。過去実績は着順ではなく着差で考えたい。
過去10年に出走した日本馬のおよそ3分の1はセントウルSからの参戦で5勝2着4回3着3回というから、ローテーションとして王道。連勝しているのは2018年のファインニードルと2019年のタワーオブロンドン。
次に多いのがキーンランドCからの参戦で2勝2着1回3着5回と8頭で、両方勝ったのは2011年のカレンチャンだけ。
出走馬の半数以上は、このどちらかを叩いての参戦だが、なぜかセントウルS組とキーンランド組のワンツーというのはない。
この時期に行なわれるようになった2000年以降、前走から連勝したのは上記の他5頭だけ。スプリント戦線で勝ち続ける難しさがわかるが、逆に前走でちょっとした弱さを見せても僅差ならば十分巻き返せる。中長距離GⅠでは何度走っても力差がレースに出るケースが多いが、スプリント路線ではよほど抜きん出ている馬がいない限りは巻き返しが可能だ。
ただし「負け方」にもよる。2012、2013年連覇のロードカナロアは、セントウルSではどちらも圧倒的人気を裏切る2着だったが、勝ち馬とは同タイムだった。2015年のストレイトガールはセントウルSで4着だったがやはりタイムは勝ち馬と同じ。2014年に13番人気で勝ったスノードラゴンも、前走キーランドSで8着だったが着差は0.3秒だった。2着馬でも2011年のパドトロワはキーンランドC3着でも同タイム、2012年カレンチャンはセントウル4着でも0.1秒差だった。
人気の中心は高松宮記念の1、2着馬、ダノンスマッシュとレシステンシアだろう。しかし、ダノンスマッシュは前走思うような走りができなかった香港の影響がどうか。レシステンシアは前々走、走りなれているはずのマイルで0.9秒も離された。
出走馬を見て目を引くのはジャンダルム。なんといっても2002年にスプリンターズSを、2003年に高松宮記念を制したビリーヴの子だ。北米リーディングサイアーであるキトゥンズジョイ産駒、初仔のファリダット以来、アメリカのそうそうたる種牡馬にこだわり続けた成果がついに花開きそう。前走セントウルSでは出遅れながらも、上がり32.6秒の脚でレシステンシアから0.2秒差。スタートが五分ならばまとめて差し切れる。
しかしそれ以上に気になってしょうがないのはファストフォース。なにしろ父ロードカナロアで母の父がサクラバクシンオー。このレース2連覇どうしの“スプリンターズS配合”だ。
デビューは遅く3歳6月、しかも芝2400m! このレースを勝ったのは、あのメロディーレーンでこの時340キロ。516キロのファストフォースは先行したものの直線で失速。大外から矢のように飛んできたメロディーレーンから5秒も離された12着だった。
この後ファストフォースはダートを走ったりマイルまで距離短縮したりするが6戦未勝利でホッカイドウ競馬に転出。門別のダートで4戦3勝の成績をあげて出戻ってきた。