森友学園への国有地払い下げをめぐる財務省の公文書改竄問題で自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんの遺書を2018年にスクープしたジャーナリストの相澤冬樹氏。現在も精力的に取材活動を続けているが、8月下旬に新型コロナ感染と診断された。「最初は医療をほとんど受けられないまま症状が悪化し、壮絶だった」と明かす2週間の闘病の様子を本人が振り返る。(前後編の前編)
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向かいの病室で患者が激しくせき込んでいる。看護師が慌ただしく走り回る。容体が悪化しているのだろうか? 隣の病室では患者が待遇について苦情を言い立てている。相手をする看護師が「どうしろって言うんですか!」といら立ちを募らせる。
ここはコロナ閉鎖病棟。通称「レッドゾーン」。許可なく部屋を出ることはできない。出ようとすると看護師が飛んできて「出ちゃいけません!」と厳しい声が飛ぶ。自分は“感染源”なのだと思い知らされる。一人病室に隔離されていると「この先どうなるんだろう?」と不安が募る。
だが実際には、ここに入ることができたから命が助かったのだ。感染から退院まで約2週間の体験で見えたのは、「黙っていると医療は受けられない。声をあげて医療にたどり着くことが回復への道」という現実だった。
感染すると自宅隔離で医療が受けられない
普通の病気なら、体の異変を感じて医師の診断を受けたら、そこから治療がスタートする。でもコロナは全く違っている。咳や熱などの症状が出る。もしやと思い近くのクリニックで検査を受ける。検査キットに現れた結果はコロナ陽性。その瞬間、医師に通告される。
「あなたは隔離対象者だから、もうここには来られません」
その日、僕はクリニックで解熱剤を処方されたが2日分だった。その先はどうすればいいのか?
「同居している家族も濃厚接触者だから、やはり隔離対象です。ここには来られません。ウチではこれ以上、診察も薬の処方もできません」
そして告げた。
「こちらから保健所に感染を知らせます。そのうち保健所からそちらに連絡があるはずです。後は保健所の指示に従ってください」