コロナ禍の自粛や経済的困窮などが原因か、昨年は11年ぶりに自殺者が増加し、今年も増加傾向にある。そこでメンタルヘルスが不調な人に、心の状態をセルフチェックできるアプリ・KOKOROBOがスタート。AIを利用したチャットなどで、抑うつの重症度がわかる。さらに指定地域の居住者が専門家とオンライン相談できるメンタルヘルスシステム構築の研究も実施されている。
昨年はリーマン・ショック直後の2009年以来、11年ぶりに自殺者が増加した。自殺者数は約2万1000人で、若い世代と女性が増えている。原因は新型コロナによる自粛、それに伴う経済的困窮など社会的変化がもたらす強いストレスだと考えられている。
そこで今年4月から、長引くコロナ禍により、メンタルヘルスの不調に悩む人を対象に、非接触オンラインメンタルヘルスチェックサービスKOKOROBOがスタートした。国立精神・神経医療研究センター病院第一精神診療部兼臨床心理部の鬼頭伸輔部長の話。
「KOKOROBOは医療機関受診前の人に、メンタルヘルスケアの課題を解決するため開発されたアプリです。誰でもパソコンか、スマホでセルフストレスチェックを実施することができ、AI解析でメンタル面の評価がわかり、軽症の人にはチャットボットでのやり取りを通して気持ちの整理を行なう『こころコンディショナー』の利用をお勧めしています。他に研究の一環として指定居住者限定になりますが、中等症以上の人にはオンラインでの相談を受けられるようになっています」
このKOKOROBOは日本医療研究開発機構(AMED)の助成により、国立精神・神経医療研究センター病院、慶應義塾大学、杏林大学、名古屋大学、九州大学が共同で実施中の研究事業だ。AI開発は東京大学が担当。研究指定対象地域は東京都全域、横浜市、所沢市、名古屋市、新城市、福岡市。その地域に居住か、通勤・通学している中学生以上で専門医療機関未受診者が対象となっている。
参加するには研究に同意し、年齢、性別、生活環境などの基本情報の登録が必要。その後、うつ、不安、睡眠などに関する質問票に記入すると前述したようにAI解析のメンタル面の評価が行なわれ、ある程度の症状が認められた人には『こころコンディショナー』が利用できる。
「指定地域の人で、中等以上の抑うつ症状が認められた場合は電話やインターネットで専門の医師か、臨床心理士が約30分相談に乗ります。そのやり取りで医療機関の受診が必要と判断されたら、高度専門の医療機関をご紹介します」(鬼頭部長)