いまや美容整形は隠されるものではなくなった。SNS上には、美容整形について情報を発信・共有するアカウント、通称“整形垢”が無数に存在する。
整形垢たちは、中顔面(眉間から鼻の下までのこと)、DT(ダウンタイム。術後の腫れや赤みがひくまでの期間のこと)、キツネライン(V字型のようなフェイスラインのこと)といった専門用語を駆使して、自身がこれまで受けた施術やかかった金額などについて詳細にレポートしている。時には施術を受けたパーツのビフォーアフター写真も公開しており、そこから〈すごくキレイな鼻先! どこのクリニックですか?〉〈○○病院の××先生に担当してもらいました〉のようなやり取りが発生するのだ。
なかには、整形インフルエンサーとでも呼ぶべき存在もいる。その代表格である「整形アイドル轟ちゃん」は、チャンネル登録者数42万人以上の人気YouTuberだ。美容整形に1200万円を費やしたことを公言する彼女は、顔出しで活動しており、手術直後の腫れた顔まで堂々と晒す。轟ちゃんのもとには「痛かった整形は?」「整形するパーツはどうやって决めたらいい?」など無数の質問が寄せられ、それらに経験者の立場から回答している。
ほかにも『小悪魔ageha』の元モデルの黒崎みさ、「日本一の整形男子」ことタレントのアレン、YouTuberの「美容整形ちゃん」など、美容整形したことをオープンにするインフルエンサーは多い。彼ら彼女らがアップした自撮り写真に対して、ファンは〈かわいい!〉と称賛のコメントをつける。美容整形にマイナスイメージを持つ人からすれば、整形手術を受けたと公言する人間が「キレイな人」「かわいい人」として称賛されている光景は理解に苦しむものかもしれない。
整形垢の間でよく言われる言葉が「整形は自己満足」だ。自己満足の世界だからこそ、うるさい外野は気にせず、自分の理想のルックスを追求しよう——。まるでメイクの延長のようにポジティブに、そしてカジュアルに整形を楽しむ整形垢たちの姿勢は、美容整形手術を受けた人、あるいは受けようか悩んでいる大勢の人々を勇気づけたことだろう。
しかし、美容整形に後ろめたさがつきまとう社会のままでは、せっかく整形によって外見コンプレックスを解消しても、今度は「自分は整形した人間だ」という新たな苦悩を背負うことになってしまいかねない。