岸田文雄・自民党新総裁による党役員人事に、「露骨な論功行賞」「長老たちの言いなり」といった批判が巻き起こっている。なかでも集中砲火を浴びているのが総裁選で岸田氏の選対本部顧問を務めた甘利明氏の幹事長起用だ。
2016年に発覚して閣僚辞任につながった建設業者からの金銭授受問題について、甘利氏は10月1日に行なった会見で「お騒がせしたことをおわびする。この事件に関して事情を全く知らされていない。寝耳に水だ」と釈明したが、「説明責任が果たされていない」との批判は消えない。
その一方、同じ金銭疑惑を抱えながらあまりクローズアップされていないのが、組織運動本部長に就いた小渕優子氏だ。経産相だった2014年、関係する政治団体が主催した観劇ツアーの支出が収入を大幅に上回ったことが発覚。閣僚辞任に追い込まれたが、甘利氏に比べると今回の起用への批判は目立たない。
ネット上では、関係先が家宅捜索された際、書類などを保存していたとみられるパソコンがドリルで穴を開けて破壊されていたことから「ドリル優子」と揶揄されているが、メディアによる批判は一部が甘利氏と並んで懸念を伝えた程度。これに胸を撫で下ろしているのが、彼女の所属する竹下派の関係者だ。
「甘利幹事長のおかげです。河野太郎さんが所属する麻生派にありながら、岸田さんを全面支援して幹事長を勝ち取った甘利さんの論功行賞はあまりに露骨。竹下派も岸田さんを直前で支持することにしたものの、その印象は強くありません。それに組織運動本部長というポストは党四役に比べると目立たないため、メディアも取り上げいくかったのでしょう」