もし地震がくることを事前に知ることができたら──そんな国民の願いを実現しようと日々奮闘する在野の研究者がいる。
国内初の複数の周期彗星(一定の周期で太陽に近づく彗星)発見を果たし、1985年には山梨県北巨摩郡(現・北杜市)に日本初の民間の公開天文台「八ヶ岳南麓天文台」を開設した天文研究者・串田嘉男氏が地震予測を始めたのは「流れ星の観測」がきっかけだった。
「1993年夏に、FM電波を利用して流れ星をモニタリングする『流星電波観測』でペルセウス座流星群を観測していたら、通常とは異なる変動を発見しました。その数日後に北海道の奥尻島でM7.8の北海道南西沖地震が発生し、『あの変動は地震の予兆だったのでは』と直感したんです。
その後、1995年1月の阪神・淡路大震災、同年5月27日の北サハリン地震(M7.6)の際も、地震の発生前に特徴的な変動を観測し、大地震の予兆を捉えることができました。そこで『地震は予測できるもの』と確信して、以降26年間、精力的に研究を続けています」(串田氏)
現在、串田氏は極めて微弱な電波の変動も捉えることができるように調整したアナログ式のFM受信機を使用し、地震発生前に起きる変化をモニターしている。
「八ヶ岳南麓天文台にある18機の観測装置のほか、遠隔操作できる無人観測装置を秋田県横手市内に6機、高知県須崎市内に8機所有しています。
それらを使って全国50局以上のFM放送局の電波を受信し、変動をモニタリングすることで予測の精度を高めています」(同前)
受信機が捉えた電波の変動は、デジタル記録計で「線」(基線)として記録される。
「通常の基線は一定幅の動きを記録しますが、地震前兆の変動では、線にうねりや櫛歯状の突出変動などが現われます。こうした基線の変動をもとに、過去の例との比較や数式に当てはめるなどして地震の規模を推定しています。
また、地震の前兆となる電波を発信した各地のFM放送局の位置と電波出力などから発生場所を推定し、変動の時間的変化などから、発生時期を導き出しています」(同前)